23.新世界  リエミ様

「幻よりも愛しいこの日々を。お次はこちら!」


 題・新世界

 著・リエミ

 キャッチコピー・「退屈でしたら、人間博物館へ行きませんか」

https://kakuyomu.jp/works/1177354054887350057/episodes/1177354054887350087


「内容は、人とロボットの関わり、といった具合です」

「舞台は新世界と呼ばれる未来の地球。人間以上に知恵を持ったロボットが住む世界。対して人類は争いで自滅して、絶滅危惧種になっていた」

「やがて、ついに最後の一人になってしまいます」

「ロボットは彼を保護するために世話をするんだけれど、この部分が妙にぞわってするんだよ」

「世話というより飼育に近いでしょうか。もしくは管理」

「管理って言葉が一番適しているんじゃないかな。地の文の『厄介なモノ』ってところに、人ではなく『物としてのヒトと接する』意識があるみたいだし」

「賢すぎるあまり、効率しか考えられなくなった残酷な知性を垣間見せているようです」

「管理されながら育ったヒトは、やがて地上に出る。そして『人間博物館』という生きた人間から見れば物騒なところにでかけるんだけれど……」

「ここからはどうか、あなた自身の目でお確かめください」

「人とロボット。作る者と作られたモノ。今まで起きたことと、これから起きること。もしもあなたがヒトならば、最後に何を選ぶのかな?」

「立場によって、見える景色は変わりますよ」


 それから二人が話したのは、『人類は絶滅するか否か』という議題について。

 SF作品の小説や映画では、こういったいわゆる『終末もの』の設定が人気を博している。

 大規模な戦争、自然災害、致死性の高い疫病、巨大隕石といった災害、あるいは超越的な事象。いずれも文明や人類が死に絶える様が克明こくめいに描かれており、見る者に対して「お前らもこうなるかもよ?」という不安と、一種倒錯とうさく的な破滅による快楽を提供してくれる。


 では実際のところ、遠い将来人類は絶滅するのであろうか。

 リンドバーグとカタリィの意見は真っ二つに割れた。


「私は、絶滅すると思います」

「どうして」

「太陽に呑み込まれるからです」


 その理由は、地球はいつかは必ず赤色巨星と化した太陽に呑み込まれる運命にあるからだという。

 宇宙に存在する星には寿命があり、消滅に至る段階がある。例えば内部で核融合反応を起こす大きな星は、水素がヘリウムに変化するにつれて、次第に水素からなる恒星の外層が膨らみ始め、赤くなる。この状態を赤色巨星という。

 太陽も例に漏れずいつかはそうなるため、いつか地球を呑み込んでしまう。なので人類になすすべはない。

 もっともそれ以前に、エスカレートした戦争や環境破壊による自滅の可能性もある。

 

 リンドバーグは悲観的にそう語った。

 

 しかしカタリィはどうも楽観的だ。


「ぼくは、生き残ると思う」

「なぜ」

「赤色巨星になる前に、どっか別の星に逃げちゃえばいいんだよ」


 科学の発展と共に宇宙空間への進出が日常化すれば、きっと別の星での移住も可能になる。宇宙空間にある星など文字通り星の数だけあるのだから、きっと見つかるはずだ。そうカタリィは期待している。


「科学の進歩って日進月歩ですごいでしょ。きっと間に合うよ」

「ですが問題は山積みですよ?」


 移動する燃料、優秀な人材、莫大な費用、最先端のテラフォーミングにどれだけの労力を注ぎ込まなくてはならないのか。

 しかも宇宙というのは広大で、星々の間にはとてつもない隔たりがある。

 宇宙空間において用いられる長さの単位、光年(9.5兆km)からも、その途方もなさがうかがえる。

 

「本当にできるとお思いですか」

「でも絶望したってどうにもならないし」

「まあ、それもそうですけれども」

「信じようよ。ヒトじゃなく、人の未来を。ぼくたちを生んだ者たちの、これからを」

「……ですね」


 人間は太陽が昇る限り、自ら考え、科学をよりよい方向へと進展させてゆくことができる。いつかその恵みの星が灼熱の赤い牙を剥こうとも、必ず乗り越えていける。

 最後の一人になんかならない、たくさんの仲間と共に歩める新世界へと。

 カタリィとリンドバーグは、そう願ってやまない。

 




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