礼装の小箱

作者 九藤 朋

15

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★★★ Excellent!!!

時が止まったように古風なお屋敷で暮らす少女、華夜理。彼女を守るように同居する少年、晶。いとこ同士だけど、互いに秘かに心を寄せています。
平穏だった生活に波風を立てたのは、華夜理の遺産を狙う大人達でした。

脆さを孕んでも美しい少年少女の純粋な心。
合理的で手段を選ばない大人達の野心。
大人達の方がしっかりした生き方をしているのに、少年少女に感情移入してしまいます。

久しぶりに、純文学みたいな美しい物語に出会えました。

★★★ Excellent!!!

言葉がきらりきらりと輝いていました。
灰鼠、濃紺、漆黒、白銀、朱。
読み進める毎に、流れ込んで来る色彩の数々。
一文一語が驚く程の美麗さで綴られています。

そんな文章が彩るのは、一人の危うげな少女の物語。
過去に心の傷を負った彼女は、まるで時が止まったかの様な家に籠って日々を送ります。
彼女を見守るのは従兄弟の少年。
慈しみを以て彼女と接する彼ですが、その心情は徐々に変化して行き……。

緻密な心理描写もまたこの作品の魅力の一つです。
少女と少年の少々拗れた恋模様。
そこに複雑に絡みついて来る周囲の人間達。
そんな関係が織り成すストーリーからも目が離せません。

まるで煌めく宝石箱を覗き込んでいる様な気分に浸れる作品。
美しい小説に出会いたい方へ、是非お奨めの一作です。

ご興味を持って下さった方々。
もし宜しければ、どうぞこの小箱の世界をご覧下さい。

★★★ Excellent!!!

★〝儚い〟―そういう言葉がまさに似合うような大和撫子の華夜理、そして、彼女と同棲し献身的に彼女を守る晶、この2人のまるで宝石箱の中の古典文学のおとぎ話のような日々の情景から物語は始まる。そして読み始めると、この幸せな微温空間がずっと続くのでは? と読んでいて期待をさせられてしまう――

★だが、それはある2人の青年の登場で急展開する。

――客観性に優れた浅葱――
――世の中を斜めに構えた浅羽――

 正反対の個性の双子がもたらした〝外界〟の空気によって宝石箱の家が怒涛のように揺らぎ始める

★華夜理の過去が紐解かれて行くにつれて、幸せの宝石箱は存在せず、堕すべきような悪意が外から、内から、心の中から、次々に現れる。そして彼女を苦しめる

★この作品で素晴らしいのは華夜理を守ろうと集まる3人の青年だ。晶、浅葱、浅羽、個性も価値観も異なる彼らが悩み苦しみ時にはぶつかり合い華夜理と言う宝石を守ろうとする。その顛末は貴方の目で確かめるべきだ。

――さて、ここまではこの作品を初見したときのレビュー。ここからはあらためて再読して感じたものを付け加えよう――

◆この作品には、2つの人間世界がある。すなわち――

――社会的にも地に足をつけていつつも、欲と歪にまみれた〝大人〟――
――自らが抱えた思いに純粋でありつつも、ガラス細工のように繊細で鋭利な完成の〝子供〟――

 その2つの世界の住人たちは、互いににらみ合いながら、時には手を携えながら、目まぐるしく人間模様を変転させていく。
 特にこの物語で目を離せないのが、晶や浅葱や浅羽がなんとかして華夜理を守ろうとしつつも、彼ら自身も若いがゆえに3すくみの構図の中で互いににらみ合いながらも不器用な共闘体勢を維持しようともがく、その姿だ。

 華夜理と言う美少女を軸に据えつつも、物語の骨子において華夜理を守ろうとする3人の姿が核でありつ… 続きを読む