商店街の福引き with 俺 feat.商店街のおっさん

商店街の福引き with 俺 feat.商店街のおっさん

 たまたま商店街に立ち寄ったら、福引きが行なわれていた。

 よくある、ガラガラ回して転がり出た球の色で何等賞か決まるアレ。

 ちょうどよく買い物後で券もあったので、一回だけやってみた。


 ガランガランガランガラン!


「おめでとうございまーす!」


 小豆色のはっぴを着た商店街のえらい人らしきハゲのおっさんが、俺の顔を見て手持ち式のベルをけたたましく鳴り響かせた。


「えっ、マジで!?」


 転がり出た玉の色は茶色。

 何だかパッとしない色だがしかし、どうやら当たりの色らしい。マジか。

 ヤベーな俺の運。昨日ガチャで爆死したのはこれの前フリか?


「おめでとうございます! おめでとうございまーす!」


 ガランガランガランガラン!


 おっさんがさらに繰り返してベルを振り回し続ける。

 一体何が当たったんだ。俺は何等賞を当てちまったんだ!!?


 期待が膨らむ。

 胸の中で喜びが噴き出し溢れて顔がにやける。

 こんだけ派手に騒いでくれるなら、それこそ目玉賞品が当たったに違いない。


 家電か? パソコンか? 旅行券か? もしや現ナマ!?


 オイオイオイオイ、現ナマだったら幾らだよ。

 もしやもしやゼロむっつとか来ちゃう~? マジで~? うひょ~。


 もしそうだったら何買っちゃおうかな。

 まず新しいバイク欲しいな。新しいパソコンも欲しいな。ゲームやっても止まらないスッゲーハイスペックなヤツ。それとテレビとかも欲しいし。


 そういえば妹の誕生日が近いな。

 ん~~、ここはサプライズでどっかのレストラン貸し切りとかしちゃう?

 これ来たわ、俺の時代始まったわ、夢膨らみまくりだわー。


「おめでとうございま~~~~~~~~~す!」


 ガランガランガランガラン!


 と、いっときの夢に浸っていた俺は、おっさんの声とベルの音で現実に引き戻された。まだやってたんか、このおっさん。


「あの、賞品って何が?」

「おめでとうございま――――ッす!」


 ガランガランガランガランガランガランガランガラン!


 分かったよ、もういいよ、おめでたいのは理解したから止まってよ!

 いいかげんうるさいよ、周り見ろよ! 通行人がこっち見て笑ってるだろ!


 ってなんで俺の方見て笑ってんだよ!?


「おめでとうございますおめでとうございます! おーめーでーとーございまーす! お、お、お! お、お、お! お、め、で、と、う、ご、ざ!」


 おめでとうございますで三々七拍子してんじゃねーよ!

 中途半端に終わって消化不良感がパネェことになってんじゃねーか!?


 ガランガランガランガランガガラランンガガラランンガガラランン!


「しかも何でいつの間にベル二刀流になってんだよ!?」


 耐えきれず、ついに俺はツッコんでしまった。

 しまった、これは失策。俺は舌を打って視線を周りにやる。すると――


「ままー、なにあれー」

「しっ、みちゃだめよー」


 子供は俺を指さし、母親は俺の方をチラリと見て足早に去っていった。

 やっぱ仲間扱いされてるゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥ!?


「おめでとうございます! おーめでーとーございまーす!」


 そしておっさんは番傘を広げるとそれを回して傘の上でベルを回し始めた。

 そのおめでとうございますは年始専用だろうがッ!?


 クソッ、帰りてぇ。

 だが福引に当たった以上は帰るワケにはいかねぇ!

 バイクが欲しい、パソコンが欲しい、何より妹の誕生にサプライズしたい!


「お~め~で~と~う~ございま~~~~~す!」


 そう願う俺の前で、おっさんはベルを片手に他の商店街スタッフらしき数人を率いて組体操の扇を完成させていた。


 ガランガランガランガラン!


 いや、両手使ってる状態でどうやってベル鳴らし――あ、口で噛んでですか。

 スゲェ無駄な気合の使い方を見た気がした。


 ――いや、ダメだ。呑まれるな。これはきっと、商店街の試練なのだ。


 ただの幸運だけでは商品を授けることはできない。

 心・技・体、その全てを備える者にこそ、この商品は相応しいのだ、と。

 そんな商店街の真意が、俺にはひしひしと感じられた。


 つまり俺が手にした商品はそれほどの高レア。

 ウルトラ、レジェント、アルティメット、マーヴェラス、ユニバース!

 いいや、さらにその上、前人未到、空前絶後、そんな超絶レアに違いない!


 いいぜ、やってやるよ。

 こう見えても昔は高校入学と同時にデビュー出来たらいいなーとか考えてたヤンチャ坊主なこの俺だぜ。

 現在大学二年、過去数回告白しても常に「友達でいようね」とか「あなたはいい人だけど」と初めから脈がなかった系のお返しをされ続けているこの俺に向かってそんな試練を仕掛けてくるとはいい度胸だ!

 しかし痛ェ! 自ら古傷を抉って心が痛ェ!


「おおおおめえええでえええとおおおございまああああああああす!」


 うおおおおおおおお、おっさんが俺に迫ってくるううう!?

 近い、近い近い近い近い近い近い! 吐息なまぬるぅぅぅぅぅい!!?


 ガランゴロンガランゴロンガランゴロンガランゴロンガランゴロンガランゴロンガランゴロンガランゴロンガランゴロンポクポクポクポク!


 ぐあああああああ、おっさんだけじゃなく他の商店街の皆さんまでベル鳴らしててうるせぇぇぇぇぇぇぇ誰だ木魚リズミカルに叩いてんの!!?


 クッソオオオオオ、だが負けねぇ、絶対負けねぇ!

 妹よ、お兄ちゃんに力をォォォォォォォォォォォォォォォォォ!


「俺は何等賞が当たったんですかァァァァァァァ――――ッッッッ!!!!」


 商店街のおっさんに向かって、腹の底からあらん限りの大声で叫んだ。

 おっさんは言った。


「七等のティッシュでーす」


 俺はおっさんの鼻っ面にヘッドバッドを叩き込んだ。




 ――なお、のちに聞いた話だがこの商店街では誰が相手でもこんな感じらしい。

 二度とここの福引きしねぇ。俺は固く心に誓った。

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