第115話 旅の帰国と宴会と
涼達が魔界へ向かう為に船の作製を提案してからだいぶ経った。
仲間達はそれぞれの地で事件に巻き込まれながらもお目当ての鉱石を見つけ出し皆ガネットへ帰国した。
「いや〜長旅でしたな〜」
「それ程長い旅じゃなかったろ…」
「だが、こんなに長く離れた事はなかったと思うよ」
カイエン、ルーガル、和樹は城門を通りガネットの城へ入り秘密基地の馬車へ帰還した。
「皆様、ただ今戻りましたぞ!」
「いや〜遅くなったな〜」
「何だかんだで一月は向こうにいたからな〜俺達が最後かって…」
三人の目の前では墜落しバラバラになった船が転がりそれを呆気に取られた様に眺めている、リア、信道、海斗の三人。
「な、何があったんだ!?」
カイエン達は荷物を捨て駆け寄る。
「あ、カイエン達か!」
「のぶ何だこの有様は?」
「いやそれが…」
「俺達もついさっき帰って来たからな〜」
「何故か船が墜落してたんです…」
「「「何っ!?」」」
やがて中から目を回したベルとアリシアを背負って涼とルビティラ、続いてコハクと愛(まこと)が宝石獣達を抱えて出てきた。
「涼!」
「愛!」
「コハク!何がどうなってるの!?」
「いや何ともベルらしい理由でね」
何訳わからない事言ってんのよ!!
「涼!一体何があった?」
「いやな、実は…」
「このチンチクリンが手抜き工事したからだティラ!!」
「誰がチンチクリンいでありますかっ!!」
目を回していたベルが飛び上がり目を覚ました。
「お前気絶したんじゃないのか!?」
「チンチクリンとは聞き捨てならんでありますよ!!」
「ベルちゃんこの有様は何なの?」
「実は旅先で涼さん達が捕まったのを聞いて大急ぎで飛べるくらいは出来る様にしたんでありすまよ!」
それは凄いな!
じゃあ何で墜落したんだよ??
「急いで作ったからあっちこっち壊れちゃったであります。てへ!」
「やっぱ手抜きじゃないかティラ!」
「しょうがないでありましょう!これでも即席にしては良き出来た方なんであります!あ〜自信作のピークヘッドが〜」
船首の事。
「まあ、おかげで俺達助かったんだから。もういいじゃないか。」
「そうよ…早く降ろしなさいよ!」
アリシアは真っ赤になり声を上げた。
彼女は涼におんぶされていたのだ。
「何だよ」
「恥ずかしいのよ!ていうかどさくさでお尻触ったでしょっ!スケベ!!」
「仕方ないだろ!じゃなきゃおぶれないだろ!」
「お馬鹿!デリカシー無し!もう最低!」
「まあまあ!」
信道が割って入り止めた。
「ベルちゃん。船は大丈夫なの?この有様じゃもう飛べないんじゃ」
「ご心配なく。これは試作品でありますか!」
「試作品だと!?」
涼は声を上げた。
「当たり前でありますよ!私が何も考えてない訳ないでありますよ!」
ベルはそう言うとがま口鞄から何かを取り出した。
「本物はここであります!」
壁に貼ったジッパーを引くと中から骨組みのままのあの船が出てきた。
「お前どこにしまってんだよ!?」
「私は天才でありますからね!この位の圧縮空間理論何かチョチョイのチョイでありますよ!」
いや本当に凄い。
未来から来た猫もビックリだわ絶対。
未来から来た猫?何でありますか??
それは聞くな。
「あんな活躍したのに試作品なのかよあれ?」
「墜落した時は死ぬかと思ったティラよ!」
「無事だったんだから、いいんでありますよ!」
「ベルちゃん。後どれくらいで完成できる?」
アリシアがベルに聞いた。
「そうでありますね…必要な鉱石もこれだけ集まったから何とか後1週間くらいで仕上げるでありますよ!」
「良し!俺達も手伝うぜ!なあ皆んな!」
「「「「「「「「ああ!」」」」」」」」
仲間達は頷き声を上げた。
「実はこのプロジェクトに協力を仰ぎたいって言ってくれた国の人が明日技術者を派遣してくれる事になったのよベルちゃん!」
「姫様!本当でありますか!」
「ええ、斑鳩帝国が名乗りを上げてくれたのよ!」
「斑鳩帝国??」
涼は聞いた事無い。異世界人だからな。
「斑鳩帝国はホラ涼達が行ったアリソナ砂漠があるガネットの反対の大陸に位置する巨大な王国なのよ!」
「斑鳩ねぇ〜何で艦隊みたいな名前なんだよ?」
「さあ?そこまでは判らないわよ。でも、初代勇者の代からガネットと親交がある同盟国だから信用は出来るから大丈夫よ!」
へえ〜そんな前からの友好関係な国なのか!
なら大丈夫だし。そんな大国なら留守が多くても何とかなりそうだな。
「とりあえず、みんなお疲れ様でした。明日は船の作業を再開するから今日はゆっくり休んでね!」
「ああ、そうするわ〜」
「色々あって疲れたティラよ…」
「よし、今晩は俺が腕を振るうから。みんな店に来てくれよ!」
「待って信道!」
「どうした姫様?」
「食事しながらでいいから、みんなの旅の話を聞かせてくれないかしら?城の食堂で!」
「なるほどな。つまり報告も兼ねてか!」
確かに皆んな戻って来たばかりだからな。
堅苦しい玉座の前で報告するより、食事しながらのがいいと踏んだ訳か。
王族としてはどうかとは思うが…まあいいだろ。
「いい考えだと思うぜアリシア!」
「確かに城で食事なんかした事ないしな」
「のぶさんのお祖父さんは確か元宮廷料理人でしたよね?」
「ああ、確かに昔祖父さんが王様達の飯を作っていたな。」
それを今度は俺がするのか。まあ、料理を作る為にキッチンを借りるだけだが。
「信道。夕飯はご馳走フルコースよ!お勘定は弾むから!!」
アリシアはそう言うと指を丸にしお金の合図をする。人差し指と親指で丸を作り残りを上にするアレ。
「よし来た!海斗手伝えよ!!」
「はい師匠!」
「良し皆んな!宴と行くか!」
その夜、涼は仲間達とガネット城の食堂に集まる。アリシアと仲間達にガネット王に賢者マナリア、蝦蟇爺に城を守る兵士達に囲まれ半ば宴会みたいになっている。
厨房では信道が海斗と店のアンズと家族を呼び寄せ大量の食事を作って大忙しだった。
漫画で見たような長いテーブルに皆んな座り日本食が次々とでてくる。
天ぷらに串カツに刺身にチャーハンとどこの飲み会だよ!
「あはは!実に美味い酒だ!流石信春殿のご子息達だな!」
「お父様。信道は孫よ孫よ!」
「ご機嫌だな王様!」
「わかりますかな?娘が無事に帰って来て更には勇者になりと私はこんなに立派になったアリシアを誇りに思う」
「お父様…」
ガネット国王はアリシアが突然いなくなり旅について行った日から実は気が気じゃなかったのだ。
やはり妻を姪と義理の弟に殺され忘れ形見である一人娘が大切で仕方がないのだ。
「お父様…その…勝手に居なくなったり、勝手に勇者になったりと色々ごめんなさい…」
「いや可愛い子には旅をさせろと言うからな。アリシアは本当に優しくて強いいい跡取りになってくれた。本当に嬉しいぞ!」
「お父様…」
アリシアは思わず涙を流す。
「王様。アリシアは強いし何も心配ないって!」
涼は食べ物を食べながらそう言った。
ていうか王様相手にかなり失礼な事してるな今更ながら。
「涼!お父様に本当に失礼よ!!」
「あははは!構わないさ。涼殿には末永く娘を任せたい次第ですからな!」
「ちょ!お父様何言ってるんですかっ!!」
アリシアは真っ赤になる。
「ん?任せるって何を?」
「いやはや涼殿は本当に大物ですな!孫の顔が楽しみですぞ!」
「孫?まだ早いだろ!」
「そうですな!あはは!」
「もうっ!!話を進めないで!ていうか涼!絶対解ってないでしょうアンタ!!」
真っ赤になりながら怒鳴り上げるアリシア。
「わかってるさそんな事!」
「えっ!?」
予想外の反応にドギマギするアリシア。
「アリシアは俺が守るぜ!魔人族からな!」
「え…」
「結婚するにはまだ早いしな。アリシアだって恋愛の一つくらいしたい年だしな。まだまだ子供だしな。焦る事ないさ!」
「やっぱり判ってないじゃないっ!!馬鹿ぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!」
アリシアは怒鳴りながらその場にあった熱々の豚汁を涼の顔にぶっかけた。
「あちちちちち!!」
涼は飛び上がる。
「ふんだ!お馬鹿!ばーか!ばーか!」
「何なんだよ言ったい??」
涼は濡れた手ぬぐいを海斗から受け取り顔を拭いた。
「本当に涼さんは…」
「馬鹿だな…」
「全くだ…」
「アレでヒーローか?」
冷ややかな眼差しで涼を見ている四人。
「涼殿何かしたんですか?姫様随分怒ってましたが」
「ルーガルさん貴方も先生の事言えませんよ…」
「こっちはこっちで馬鹿だったか…」
カイエンはそう言うと頭を外して酒を首の穴にいれた。
「ぶーー!人前で頭外すなカイエン!!」
「硬いなコハク!」
「いや慣れた身でもやっぱり怖いですから!!」
「リア殿まで。我輩達はもはや一心同体のチームですぞ。これくらいはなんのその!!」
「「普通に怖いから言ってんだよ!!」」
コハクとリアは酒が入ってるのか?ツッコミが激しかった。
「やれやれ、騒がしい連中じゃの…」
「でも皆んな楽しそうですよ先生!」
「しかし奴らには勇者としての心構えと言うものがな〜」
「蝦蟇爺。皆んなそんなの無いでありますよ!」
「じゃろうな。」
これが世界を救う予定の勇者達と思うと本当に信じられないわい。
しかし、数々の困難を乗り越え仲間達を増やし助けた人達の為に頑張る彼らは確かに勇者と呼べるな。うんうん。
周りを見ても皆んな楽しそうに酒を交わしながら笑いあいそして誰一人悲しい顔の者は居ない。
彼らはきっとやってくれると不思議と思ってしまう。何でだろうかの??
そして、やはりと言うべきかこんなどんちゃん騒ぎで旅の報告なんてできる訳もなく、涼達はこの当たり前だがかけがえのない楽しい時間を朝まで続けた。
船は本当に完成するのかよ!
するであります!
割り込むな!回想シーンによ!!
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