第103話 小さな勇者

村に大量に何故かいた巨大ゴキブリ達を退けた信道達は避難所で即席で炊き出しをつくり避難して来た人達に振る舞う。

「ありがとうございます」

「別に何もしてませんから」

「謙遜なさらずに。おかげで助かりました」

「しかし、一体何があったんですか?」

海斗は事情を聞いた。

「アレは一週間くらい前でしょうか、最近妙な錬金術師がリンノウ村の先の国に現れ妙な力で害虫達を巨大化させ国を乗っ取とり支配されたのです」

「妙な錬金術師?」

「リンノウ村の先の国って」

「クーベル王国です」

「どんな国なんですか?」

「様々な分野の学問が精通している国で、あらゆる国の貴族達が学ぶ為の学校がある唯一の国です!」

ラノベで言うとこの魔法とかの専門の学校がある街か。

「その妙な錬金術師が支配していていると?」

「はい、おかげで周りには気味の悪い害虫型の魔物があっちこっちに蔓延っていて、ロクに食料の調達に行く事も出来ない状態なのです」

「その魔物達が魚以外の作物や生き物を食い漁りこのざまだ」

その錬金術師が放った害虫がここいら一帯を支配して村を追われて今にいたるか。

「魔人族の仕業か?」

「海斗さん。虫を操る魔人族はいなかったんですか?」

「はい、自分の記憶ではそんな怪人もいなかったような」

「何にしても食べ物を粗末に扱うとは許せないな」

料理人としてここまで食材に敬意を払えないとはなどんな馬鹿だ?

「害虫って事はあのゴキブリ以外にも」

「百足や蠍…もしかしたら毒を撒き散らす虫なんかも」

「いる可能性は高いな…このままにしといたらここいら一帯が死に絶えるかもしれないぞ」

確かにゴキブリだけならまだしも、もし百足や蠍、蚊やハエなど色んな意味で汚くて危険な昆虫の魔物が特大サイズでうろついていたら人間なんかおそらくただしゃ済まない。

「こりゃルチルを探してる場合じゃないかもな」

「ルチルですか?」

「知ってるんですか?」

「自分達はそれを採取するために炭鉱があるリンノウ村へ旅をしてるんです!」

「おそらく無いでしょうな」

「どう言う事だ?」

「はい、実は少し前にその錬金術師が現れ害虫達を使って村人を襲い追い出し炭鉱から

鉱石を根こそぎ奪っていった言う噂がありまして」

マジかよ…ルチルは無いって事か!?いやしかし何でそいつはそんな大量の鉱石を奪っていったんだ?例え金になるにしてもいちいち磨いたり研磨したりとしなきゃ宝石とは呼べないただの石と同じ物だってのに。

「師匠!その錬金術師の元へ乗り込みましょう!」

「何?」

「こんな事する時点はそいつは悪です!勇者として見過ごせません!」

「力で解決しようとするな!お前は客を選べる権利はあるのか?」

「あ、ありません…」

「それと同じだ。まずはどんな奴か話をしてみてからでも遅くないだろ?」

「そうですね!まずは何しても行ってみましょう!」

「クーベルへ向かうぞ」

「よ、よした方が良いですよ!」

「行く途中にはさっきの害虫達が道端にも蔓延っているんです!横切る者は容赦なく骨だけにされます!!」

つまり行く道にも害虫がうようよしてると言う事かよ。

「他の道はないんですか?」

「ありますが、遠回りになる上にグルミ族の森なのです!」

「グルミ族??」

「神聖な森に住む種族で分かりやすく言うと小人族です!」

「小人族って絵本とかで出てきた。」

「人と交わらない故におとぎ話扱いされてる種族だよな?」

この異世界には小人もいる。

ただ、人と関係をまず持たない上に小さいため見つからずその存在は正におとぎ話で確証がない。

「何でその小人の存在に確信が持てるんだ?」

「はい、入ろうとした者は妙な呪いで追い出されてまして。言い伝えではこの辺りには昔小人族がいたと言う話で」

「大方へんな魔物かまたは魔人族が根城にしてるんだろ」

「ま、魔人族が!?」

「ま、まだ分かりません」

「自分達が調べてきますから」

「後、知り合いに食料の物資を手配しとくから俺たちが解決するまで頑張ってくれ」

信道はガネットにいるアリシアに事情を話しこの避難所と一帯に食料の物資を頼むと三人は直ぐに旅立ちそのグルミ族の森へ向かう。

:

グルミ族の森

グルミ族と呼ばれる森の種族と呼ばれる小人族が暮らしているという噂の森。

森についた信道達は先へ進む。中は驚くほど綺麗な空気で溢れていて元気が湧いてくるようだ。

「綺麗な森ですね!」

「西陽がこんな綺麗に見えるなんて、いい食材がありそうですね師匠!」

「だな。けど、なんか…迷ってないか?」

「確かに…」

「この木さっきも見ました」

なんか変だぞ。

「まるで迷う様に誘導されてるみたいだな」

「迷わされてる??」

「ま、まさか」

「海斗、オナラ宝石だ」

「え?」

「こんな所で使うんですか!?」

「犯人を炙り出す!」

「判りました!」

海斗は人口宝石を取り出しはめ込みグリップを引くと振り翳すと黄色い煙の刃が放たれると爆発し酷い悪臭が充満する。

三人はしゃがみ鼻を摘む。

バタッ!

「「「ばた?」」」

なんか落ちたのか!?

三人は落ちて来たのを確認するとそこには目を回した小さな人だった。しかも手のひらサイズ。

「小人…」

「まさかグルミ族!!」

「本当にいたのかよ!?」

ドングリの帽子を被ったグルミ族が目を回している。

「んぐ臭い!!毒ガスか!」

「人間め!」

「宝泥棒め!」

な、なんだ?なんだ?

周りから声は聞こえるが姿が見えない。

ブーン!

雀蜂があっちこっちから現れた。

「は、ハチ!」

「しかも雀蜂!!」

「ハチに何か乗ってます!」

よく見たら小人が雀蜂にまたがっている。

「うわ!小人が蜂に乗ってる!?」

「動くな泥棒!」

ど、泥棒!?俺たちが!?小人から何かとった覚えはない!!

「ど、泥棒って小人にあったが今日初めてなんだぞ!何を取ったって言うんだ!」

「我が初代族長の剣だ!」

「は?族長の剣??」

爪楊枝サイズの剣なんか誰も持ってないわ!

「女。貴様の腰の剣はまごう事なく我がグルミ族の剣!何処で奪いてにいれた!!」

「え?宝救剣ですか?」

「宝救剣?それは族長の証の剣だ!」

「ちょっと待った!」

信道が待ったをかけた。

「な、何だお前は?」

「小人の嬢ちゃんよ。聞いていいか?」

「な、何だ?」

「お前らの剣って、もしかしてその族長が死んだら消えたのか?」

「な、何故知っている!グルミ族の剣は初代族長が亡くなった日に光に消えたと言う言い伝えを!まさか貴様が奪ったのか!!」

そう言う事か!!グルミ族は間違いなく。

「の、信道さん?」

「師匠話しがついていけませんよ」

「なあ、その族長さんが剣を持っていたのはいつだ?」

「え?いつって初代族長は千年以上も昔だ。我々グルミ族はここら一帯を縄張りにしていたの」

「やっぱりか!お前らの族長は初代勇者か?」

「「え!?」」

今何て言った?

「初代勇者?確かに族長はグルミ族の勇者と呼ばれていたが」

「宝石獣とか?」

「何故それを!?」

「成る程な…いいか、お前達の族長はかつてこの世界を守った初代勇者の仲間だよ」

え、えーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー!と声を上げるグルミ族。

「「って知らなかったのっ!?」」

声を上げたリアと海斗。

:

「我がグルミ族の族長が初代勇者の一人で魔族を倒した英雄とな?」

「お前達何で知らなかったんだよ?」

海斗はお茶をすする。

グルミ族はその話しを詳しく聞きたいと森の奥の住処に案内してくれたのだ。

「いや、グルミ族は元々人間と接点を持たず更には住みやすい場所を求めて転々としてて、しかもまだ当初はグルミ族はそんなにいなかったから」

「ようは剣が突然消えて盗まれたと思い込みそれしか伝わってなかったのか!!」

なんだよそれ…つまり世界を救った初代勇者だったって言うのが伝わってなかったのかよ。

「まあ、小人が勇者とは誰も思わなかったし、何より知らなかったんだな」

「確かにこの剣は大きさを自在に変えられますからね。小人さんが勇者なのも納得がいきます」

「そうとは知らず失礼した。まさか役目を終え次の勇者が現れるまで消えていたなんて」

小人って絵本の通りかなりのビビリなのか??あわってためいて肝心な伝承を忘れてるとはな。

「わかってくれればいいんですよ」

「お主優しいな!」

グルミ族の女性がリアの肩に乗る。

「改めまして自己紹介だ。私はグルミ族の長の娘でカナリアだ!」

「私はリアです!」

「俺は海斗!」

「信道だ!」

三人は人差し指で握手する。

小人って小さいな〜

「来てくれ!父上にあわせよう!」

カナリアは族長を呼ぶ。

「父上。勇者達です!」

「外の者か?」

「外の者か!姉上!?」

「こら、ポップ!」

ポップと呼ばれた男のグルミ族が葉っぱのテントから出てきた。

「アンタ達が外の世界の勇者かい!俺はポップだ!」

「よろしくなポップ!」

「おうよ」

小さな小人は海斗と握手する。

「こらポップ、失礼だろ」

「いいんですよ」

「アンタが今の族長か?」

「いかにも」

髭を生やした小さな小人だ。

「なあ、俺たちクーベルへ行きたい。この森を通りたいんだが」

「クーベルへ死に行く様なものだ!」

「例の錬金術師だろ?」

「錬金術では虫を操る事は出来ぬ!」

何だって!?じゃあこの騒ぎは??

「ちょっと待て。錬金術師が害虫を操っているんじゃないのか??」

「違う。アレはグルミ族の力だ!」

「何だって!?」

「おそらくコロナの力だ」

「コロナ?」

「俺の妹だ!」

ポップは涙を流す。

「お、おい?どうしたんだ!」

「何か訳ありか?」

「何があったんですか?」

「はい、実は私の末の娘が。誘拐されたのです。」

「誘拐された?」

害虫騒ぎはそのグルミ族の力でそれを無理やり使われてるのか?

「一週間前にやたらと香水くさいくて飾りたくってた変な女と犯人の錬金術師が拐っていったんだ!」

「香水臭くて…」

「飾りたくった女って…まさか…」

考えたくないがどいも奴しか顔が浮かばない。

「その女の人って「時期女王が」どうとかって言ってませんでしたか?」

「あ!言ってたぞ!」

「アイカだ!」

「あの人はまた…」

「犯人は泥棒女か。ていう事は魔人族が絡んでるぞ!」

あの泥棒女。また何かやらかすつもりか…この騒ぎも魔人族が関わっているなら見過ごせないな。

「誘拐犯を知ってるのか!?」

「知ってるも何も自分達の敵だ!」

「行く先々で悪さばかりしてる酷い女性なの」

「一様ウチの姫様の親戚で魔人族の関係者だ」

「ま、魔人族!!」

「我が娘は魔人族に拐われたと!?」

「間違いなくな」

しかし、わざわざ魔人族が小人なんかさらって何をしようってんだ??いや、あの女は腹いせで他人を平気で殺すんだ。理由はないか。

「無礼を働き皆様に迷惑をかけた事は重々承知ですが、お願いします。娘をお救いください勇者様!」

「言われるまでもない。」

「頭を上げて下さい」

「自分達が必ずお嬢さんを助けます!」

「「「私達・俺達は戦隊です!」」」

「せ、戦隊??」

「正義のヒーローさ!」

海斗はそう言うと笑顔で人差し指でポップを触る。

「かっこいいな!海斗!」

「だろ!」

「ありがとうございます。お礼に我がグルミ族の宝を進呈します!」

「お礼は別にいいから」

「いえいえ!是非受け取って下さい!」

「わかった、わかった。じゃあ全部終わったらな。」

「では間もなく日が傾きます。今夜はどうぞこの村で休んで下さい!」

「私達もテント持ってきましたら」

「適当に広い場所を提供してくれないか?」

「よし!案内してやるよ海斗!ついてきな!」

ポップは海斗達を案内する。

「水はあるか?」

「湖があります。美味しい湧き水ですよ!」

「なあ、森の恵みを少し分けてくれないか?シチューを作りたい。アンタ達も食べよう」

「そうですか、カナリア。案内してあげない」

「はい、父上!信道殿こちらです」

その夜はグルミ族の森でキャンプをした。

綺麗な夜空を眺めながら虫の声聞いて凄す、まるで子供の頃のキャンプを思い出す。

これから戦いが始まる前夜だが、今だけは平和に休めた。

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る