第80話 消えた涼と取り込まれたルビティラ

アンジェラ王国とアバロスに魔人族が攻めてきた。アリシア達は二手に分かれ対処にあたる。

アンジェラ王国に止めてある拠点の馬車外では魔人族の兵士達が数えきれない程現れ街に攻撃しこちらに向かって来ている。

「あーもう!みんなまだでありますか!」

「オイ、すぐそこまで来てるぞ!」

「まずいぞこりゃ」

「先生が狙いか。でも僕達じゃ…」

基地のキッチンから物音がした。

「のぶさん達であります!」

ベルが机を立ちキッチンへ向かう。

「な、なんでありますか!お前は!」

「…」

「なんか言うでありま…ぐほっ!?」

ベルは腹を殴られた。ベルは意識を失い倒れ込んだ。

入って来た謎の男はそのまま奥へ進む。

「な、なんだお前は!…ぐはっ!?」

謎の男は和樹の首筋を殴ると和樹は気を失う。

「和樹!なんだ貴様は!…ぐほっ!?」

海斗も腹を殴られ気を失う。

「な、何ですか貴方は!?先生に近づかないでくだ…!?かっ…」

愛(まこと)も腹を殴られた気を失う。

男は涼とルビティラが居る部屋に入って来た。

「な、何だお主は!?」

「…」

「何とか言わぬか!」

「…」

「な、何…を!?」

男はブラキオを蹴飛ばし他の宝石獣達を蹴散らすと涼の側へ行く。男は石化している涼を持ち上げ冷蔵庫を通り抜け何処かへ行った。

入れ違いで信道達が基地へ入って来た。

「ベルちゃん!」

アリシアは倒れているベルを見つけた。

「姫様…賢者さま…リア…」

マナリアの腕の中で目を覚ますベル。

「お前達何があった!?」

信道は気絶させられた和樹達を起こした。

「信道さん…」

「師匠…」

「先生が妙な奴に…」

「妙な奴?」

「大変だ!涼の奴が居ないぞ!」

ブラキオがぴょんぴょん跳ねながら飛び込んできた。

「な、何ですって!?」

アリシア達は石化した涼が置かれていた部屋に急いで向かうとそこには虫の息のルビティラ以外居なかった。

「嘘…」

「涼の奴どこへ行ったんだ!?」

「一体誰がこの基地に入ってきたんだ!?」

「私マーキングは間違いなく消したわよ!」

「確かに俺達もそれは見た」

「じゃあどうして涼さんだけ!?」

どうなってんだ?この基地には予めスタンプ型のマーキングを施した場所からしから出入りはできないはずだ。しかも、片道でしか繋がらない基地の冷蔵庫からしかマーキングを施してしかも消した場所には行けないし出入りも出来ないはずだ。

「マーキングが奪われたとか?」

「いえ有り得ないわよ。私が持ってるもの!ほら!」

アリシアは首から下げたハンコを見せた。

ベルの発明品のマーキングスタンプ略して魔スタンプはアリシアしか持ってないつまりこれは鍵だ。他の仲間達は宝救剣に術式で仕込んでいる為出入りには必要は無いはずだ。

「じゃあ一体誰が?」

「今は詮索はいい!外が先だ!」

「それに涼さんには追跡用のハンコを押してあるで有りますから直ぐに場所が分かるで有りますよ」

「え!?いつの間に!?」

「私にぬかりはないで有りますよ。念のために押したで有ります!これで直ぐに追跡できるで有ります!」

ベルは人口宝石を取り出す。これを使えば直ぐに場所を追跡できるのだ。

「よし良くやった嬢ちゃんデザートのプリン特大用意してやるよ!」

「プリンでありますか!!」

「信道!」

「おっと行かないとな!」

「全く…ブラキオ人型になれる?」

「なれはするが、長くは無理だ」

なんせ三日三晩ずっとルビティラの生命維持をしていた為にブラキオはともかく他の宝石獣達はくたくたで寝転んでしまっている。

涼が拐われた時もブラキオ以外は皆動けなかったのだ。

「持って 10分くらいだな…」

「それだけあれば大丈夫だ!な、姫様!」

「ええ!ブラキオ貴方は強いんでしょ!」

「当たり前だ!神だからな!」

「うん!信道ブラキオをお願いね!」

「わかった!ブラキオ行くぞ!」

「言われるまでもない!」

信道とブラキオは基地を後にした。

「姫様。ルビティラを運びましょう!」

「そうだったわね!」

「待ってくれ!」

「和樹くん?」

「海斗さんに愛(まこと)さんも…」

「こんな時何よ?」

「姫様達は涼を追ってくれ!」

「涼さんは俺達が責任持って運びます!」

「今こそ先生に恩を返したいんです!」

三人はルビティラを運ぶ役目を任せてほしいとかってでた。

「貴方達…」

「わかったわ…でも本当に大切な仕事よ!貴方達に出来る?」

「ああ、やらせてほしい!」

「自分達も何かしたいんです!」

「今度こそ間違えない!」

「良く言ってくれたわね!」

アリシアはマーキングのスタンプを和樹に手渡した。

「頼んだわよ!三人共!」

「「「はい!」」」

「じゃあ、ここは私が引き受けたからみんなは行って!」

「はい!マナリア様!」

「お祖母様宜しくお願いします!行きましょうリアさん!」

「はい姫様!」

アリシアは涼の追跡をする為に渡された人口宝石をはめ込みグリップを引くと、光のマップが現れた。

赤い光が点滅している。これが涼だ。

「涼はアバロスにいるわ!」

「どうしてこんな所に?」

「詮索は後にして行きましょう!」

「そうね!ベルちゃん後は宜しくね!」

アリシア達は冷蔵庫を通り抜けて言った。

「よーし私も頑張るであります!」

ベルは光のキーボードを出して画面とにらめっこ。

「ベルちゃん!」

「はいであります。賢者様」

「宝石岩(ジュエルロック)に通信出来るかしら?」

「え、はいマーキング済みでありますからあの辺りは反響する水晶がありすから繋げれば直ぐに」

「だったら彼らに助っ人を頼んで彼らを向かわせくれる?」

「ああ!カルタノ達にでありますね!」

「そうだよ。お願いね!」

「わかったで有ります!」

マナリアはそう言うと出て行った。

「よーし新発明の出番であります!」

ベルはそう言うと一本の剣を取り出した。

「まだ一本しかないけど彼らを呼ぶだけなら私にも出来るでありますから!」

ベルは以前カルタノ達から渡された勇者石を取り出すとその剣に3つ共はめ込んだ。

見た目は涼達の剣とかなり似ている。

はめ込むとベルは剣の持ち手のグリップを2回引いた。

はめ込んだ宝石から紫 黄色 水色の光が放たれ何処へ飛んで行った。

:

アンジェラの外では巨大な兵士達と巨大な要塞が続々と攻撃してきている。

「宝石変形!」

駆けつけたブラキオサンドライトは元の大きさに戻り信道をコックピットに入れると前足で立ち上がりか身体をバラバラにした。

やがて一つに集まり右手に槍を左肩にレール砲を構えた巨大な宝石巨人が誕生する。

「上がったぜ!ブラキオダイオー!」

「我は寿司ネタじゃないぞ!」

「悪いついな」

ブラキオダイオーはレールガンで戦艦を破壊しながら巨大化した兵士達を槍で突き倒して行く。

「すげぇパワーだな。エンカイオーとはだいぶ違うな」

「当たり前だ!来るぞ!」

今度は大砲を構えた兵士達が巨大な弾を飛ばしてきた。

ブラキオダイオーはレールガンで弾を撃ち落とすが破片が街へ飛んでいく。

「やばい!」

「エアーサークルフィールド!」

マナリアが街全体に風の壁を作り出し破片を吹き飛ばし周りにいた敵兵達に飛ばした。

更に地面に足を鳴らすと。

「マジシャンズ雷フィールド」

足元から電流が流れ出し人々を襲っている敵兵達をバッサバッサと倒して行く。

「流石先代勇者だな」

「当たり前だ。時間はないさっさと片付けるぞ!」

「あいよ!」

ブラキオダイオーは負けじと艦隊や敵兵達を蹴散らして回る。

「助っ人間に合うかしら」

マナリアは避難した人達が居る城の城壁に一人立ち向かってくる兵士達と戦車をひたすら破壊する。カルタノ達が間に合う事を祈りながら。

:

アバロスに着いたアリシア達と分かれた和樹達は言われた通りの洞窟へ向かっている。

「はぁ、はぁ重い…」

「ルビティラってやっぱ重いな」

「弱音を吐くな…二人とも」

ルビティラは小さくなるのが苦手でこのサイズより小さくはなれないのだ。

砕けた身体を丁寧に運び三人は言われた洞窟へ着くと光っている魔法陣を見つけた。

「アレか?」

「見たいですね!」

「もうすぐだ」

和樹達が魔法陣に立つと光が上がり和樹達はレッドベリルがある奥へと転送された。

「お!来たか!って誰じゃお前たち?」

「うわ!か、蛙が喋った!?」

「俺蛙は嫌いだ!くるな!!」

「海斗さん隠れないで!」

「失礼じゃなお前たちは!一体なんなんじゃ!」

和樹がとりあえず事情を話した。

「成る程代理で来たと」

「で、本当にルビティラは治るのか?」

「いいからまずはその宝石獣を見してみい!」

和樹達はもはや半壊し虫の息のルビティラを置いた。

「こりゃ不味いな…早くしないと!お前達は此処に居るな!焼き死ぬぞ!」

「え!?」

「焼き死ぬって!?」

「どう言う?」

「いいから此処から出て行け!!」

ヴァンフォワードは怒鳴り上げると三人を魔法陣へ飛ばして追い出した。

「たく…いよいよだな…」

ヴァンフォワードは針に糸を通すつもりでレッドベリルの封印を一つずつ解いていく。

封印を解く度に強烈な暑さが石から吹き出してくる。

そして封印を全て解くとレッドベリルが燃え上がる様に輝き強烈な熱さが襲う。まさにこりゃ太陽だ。

「はぁぁぁぁ!」

ヴァンフォワードはコンマ数秒だけ石に触れ術を施し宙にあげた。

レッドベリルは巨大な赤い原石になりそのままルビティラの身体に落とされルビティラの身体が一気に光り出しヴァンフォワードは吹っ飛ばされた。

「うわっ…ガク…」

頭を打ちヴァンフォワードは意識を失った。

ルビティラの破片をレッドベリルが溶かし取り込まれていく。やがてルビティラの身体は全てレッドベリルに取り込まれてしまった。

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