第51話 第2の魔王 コキュートス三世
現世へ返してもらう条件に冥界に無造作に現れるソウルイーターの駆除と発生源の根絶をハデスから依頼された涼達はハデスから聞かされた発生源へ向かっていた。
「全く涼って本当に馬鹿ね!」
「同感だな」
「まあ確かにお頭は足らんかな…」
「何だよ皆んなして馬鹿呼ばわりして。これをこなしゃ帰れるんだからいいじゃないか!」
「あのな無造作に現れる霊の魔物の根源をどうやって断つんだよ!」
「なるようになるさ!」
「その原因を知らずに引き受けた訳涼は?だからお馬鹿って言われるのよ!」
さっきからカイエンとアリシアはやたらと馬鹿呼ばわりしてくる。何を怒ってんだよ二人は??
「根拠ない博打をしたからだろ涼が」
「のぶさんまで言うのかよ!宝救剣があるんだソウルイーターくらい何とかなるだろ!」
「確かに勇者の剣ならソウルイーターは倒せるがな元を断たなきゃ意味がないんだよ!」
そう無限に湧いてくる魂を食べる魔物ソウルイーター。こいつらにとっては冥界は餌の豊庫でバイキングだ。根こそぎ食われたら輪廻転生が不可になり人間が産まれなくなるかも知れんからだ。
「その元が何なのか判らないんじゃいくら倒しても意味ないんだよ。わかったか?」
「ようするに親玉を潰すんだろ!」
だから違うっつの…
「とにかく行けばわかる!」
「涼って能天気だな」
「今更かよのぶ!」
「呆れる程の能天気よアレは」
涼達は林を抜けると洞穴が見えた。
その洞穴の周りにソウルイーターがうじゃうじゃ飛び回っている。
「あの洞窟から湧いてるのか!?」
「みたいだな」
「調べてみよう」
涼は人口宝石を取り出し宝救剣にはめ込みグリップを引く。
「ステルスジュエル」
四人の姿が一瞬で消えた。
姿が消えると四人は洞窟へ猛ダッシュした。洞窟に入った瞬間四人の姿が現れた。
「危なかったな〜」
「これ便利だけど10秒しか透明になれないのよね…」
ステルスジュエルはルーガルが思いついて作った人口宝石だ。アイデア自体はカメレオンから思いついたらしく作ったはいいが、効果が10秒くらいかしか持続が出来ないと言う欠点があり余り使わない。
「この宝石に付属してる術は高等な上にマナを一瞬で空にするからな、こう言う時じゃなきゃ使えないさ」
ステルスジュエルはおまけに燃費が悪いのですぐにマナが尽きてしまいこれが持続が短い大元の原因なのだ。
「やっぱり透明化は自力で会得しなきゃダメね…」
「あれは超高等だ簡単にはいかん」
「いいから行くぞ」
カイエンは光の玉を作り出しあたりを照らす。
「修行の成果が出たみたいねカイエン」
「ああ、けど今はこれが一杯だ」
初歩にようやく近づいたからな俺達。
涼達は洞窟を進んでいる。
蝙蝠が上にいるわ周りは濡れてるし変な匂いがするし早くこっから出たいよたく。
「なんか寒いな…」
「洞窟だからかしら?」
「いや何か変な気配がある!」
カイエンはそう言うと止まる。
涼達は剣を引き抜き構える。
涼達はゆっくりと妙な気配がする奥へ進んでみると、そこには妙な亀裂がある。
「なんだ?あの裂け目は?」
「バチバチと凄いエネルギーだぞ」
「妙な気配はこっからか?」
「あ!見て裂け目から何かでてくるわ!」
裂け目が急に電気をバチバチさせながら凄い音を出すと中からソウルイーターが飛び出して来た。
奇妙な奇声を上げながら飛び出してきたソウルイーターが涼達に襲いかかる。
「ソウルイーター!?」
「こっから湧いていたのか!」
襲って来たソウルイーターを斬り裂くと消えた。意外とあっさりだな。
「原因はこの裂け目か。」
「どうやってコレを消すわけ?」
「お決まりなら必殺技だよな!」
涼はそう言うとチェンジストーンをはめ込む。
レッド!ザ!宝救武装!
「宝救武装!」
涼の剣から光が飛び出し身に纏うと涼は変身した。
「そらよ!」
そしてそのままグリップを三回引っ張り必殺技を放つ。
裂け目に赤い刃が当たるが裂け目は消えなかった。
「アレ?効いてない?」
「一人で駄目なら」
「三人だ!」
ブラック!ザ!宝救武装!
へい!とりあえずゴールド一丁!
「宝救武装!」
「乾杯!」
二人も変身する。
三人は武器を構えてそれぞれ必殺技を発動させ裂け目に目掛けて放つ。
「これならどうだ!」
三人の放った刃が重なり回りながら裂け目に向かっていった時だ。
突然四人の後ろから別の攻撃が放たれ三人の技がかき消された。
「今のは!?」
「勝手な事をしないで頂きませんか?」
四人が振り向くと見た目が海賊の様な手品師の様な…とにかく二つが合わさった様な者がそこにいた。額から一本角が生えている。
「角!?」
「まさか魔人族!?」
「おや?知ってるんですか?勇者の皆さん」
「!?」
「お前…俺達を知ってるな?」
「ヴァンデストを倒した勇者は今では魔王軍では見逃せない存在になってますからね」
俺達がヴァンデストを倒した話はやはり広まってるか。俺達を消しに来たのか?
「お前何者だ?」
「私はコキュートス三世!初代魔王様に使える北の魔王だ!」
ま、魔王だと!?こいつもか!
「何で魔王が冥界にいるんだよ!」
「私はただ初代勇者の行方を探してるだけでソウルイーター達は邪魔な死神達を追い払う口実ですよ」
ソウルイーターがわんさか溢れたのはこいつのせいか。
「初代勇者の行方ですって!!貴方も初代勇者の剣を探している訳!」
「ほぉ〜そちらもですか?何せ霊剣ですからね持ち主が死ねば次の世代に移るここにはその情報があると踏んだので、貴方達もそうなのでしょう?」
は?初代勇者の剣が霊剣だって!?
まじかよ、霊剣…んまてよアリシアの中の宝石は半透明で触れないんだよな…もしかして元は一つだったのが分かれたのか!?
「必要な情報は得ましたからね」
「だったらさっさと出て行けよ!」
「ついでに人間族への転生をしにくくしようと思いましてね〜基本邪魔なので」
さらりと酷い事を抜かすなこいつ。
「書庫の記録を消したのもお前かペテン師やろう!」
「ペテン師とは失礼な!記録など知らん。私が来た時にはとうに消されていたからな!」
アレ?こいつじゃないのか??
「とりあえずお前を蹴散らしてソウルイーターを追い出しつやる!!」
涼達は剣を構えてコキュートスに斬りにかかるが、斬った瞬間にコキュートスは破裂し中から紙吹雪とクラッカーみたいな音が鳴り響く。そしてコキュートスは消えた。
「あの野郎!何処に行った??」
「逃げたのかしら?」
「なら丁度いい今のうちに亀裂を潰すぞ!」
「だな!もう一度三人で!」
涼達が亀裂に攻撃しようした時だった…
亀裂の中から数え切れない量のソウルイーターがどんどん飛び出したちまち洞窟が溢れる。洞窟が崩れてきた。
「ヤバイ崩れてきた!」
「一旦出よう!」
涼達は急いで洞窟を出た。
涼達が出ると同時に洞窟は崩れた。
亀裂から今度は巨大なキマイラみたいなソウルイーターが現れた。亀裂はそのソウルイーターが飛び出ると同時に消えた。
「このデカイ奴が元凶だったのか!」
「アレが亀裂そのものだったの!!」
「アレはまさかソウルイーター達の母体か!?」
「て、ハチじゃないんだぞ!」
「そう考えれば辻褄は合うだろ」
あのコキュートスとか言う魔王がこのクイーンソウルイーターって言うべき奴をこの地に放ち無造作に産ませ冥界を掻き回していたのか!
「この親玉を倒せばこいつらも消えるんだな」
「恐らくな」
「考えてもしょうがないやるぞ!」
「アリシア隠れてろ!」
「え、ええ」
アリシアは涼達と離れて近くの岩陰に隠れた。
奇妙な奇声を上げながらクイーンソウルイーター達が涼達に襲いかかる。
「行くぜカイエン!」
「アレを使うんだな」
涼はドンガンをカイエンはガッチランクアップを取り出すと剣に取り付けたグリップを引いた。
「宝救武装!」
「ランクアップチェンジ!」
涼は翡翠の鎧を纏ったホウキュウレッドラピードにカイエンはオレンジのガーネットの鎧とガントレットを身に付けた。色は変わってない。
「ホウキュウレッド・ラピード!」
「ホウキュウブラック・ランクアップ!」
二人はパワーアップアイテムで変身しソウルイーターに向かい打つ。
「おら!」
涼は加速しながら周りのソウルイーター達をバッサバッサと斬り倒して行く。
斬られたソウルイーター達は光になりどんどん消えていった。
「凄いなやっぱ!」
涼はベルの発明品に感心する。
「ベルちゃんやっぱり天才ね!ネーミングはともかく」
「それは同感だな!」
カイエンも猫型のソウルイーターを投げ飛ばしガントレットに付いた爪で引き裂く。
周りのソウルイーターも宝救剣で一気に一掃した。
「確かにこりゃ凄いな!パワーが半端ないや!」
カイエンはレバーを上に二度上げ中央でレバーのスイッチを押すと鎧は赤くなり炎の様なマントを羽織る。涼と違い素の色は変わってない。
カイエンは宝救剣から炎が吹き出しソウルイーターを焼き払った。
「二人共反動もデカイから余り使いすぎるなよ!」
信道は濁酒銃を撃ちながら宝救丁から光の剣を放ち周りのソウルイーターをいなして交わしながら倒していく。
「よし粗方片付けた!後はこのデカブツだ!」
さらに上がったクイーンソウルイーターは口を開くとバチバチとエネルギーが集まり始めた。
「ヤバイなんかくるぞ!」
「カイエン、のぶさん!俺の後ろにアリシアも!」
三人は涼の後ろに行く。
涼は鞘を引き抜き反対側の方を表にし再び差し込むと翡翠の鎧の周りに煌びやかなダイヤの鎧が覆い尽くすと姿を変えた。
「ホウキュウレッド・ガンナー!」
涼の鎧が眩い光を放ち強力な防壁を貼る。
クイーンソウルイーターは口から光線を放つ。光線が涼の貼った防壁に当たる。光線のパワーは半端ない。
「こなくそっ!」
涼はその光線を跳ね返し逆にクイーンソウルイーターに当てた。
光線に当たったクイーンソウルイーターは大爆発を起こし焼きすぎた焼き魚みたいになり落ちてきた。
奇声を上げながら立ち上がりフラフラと飛び上がる。
「逃すか!」
涼は宝救剣をガンモードにし構える。
眩いダイヤの集まり一つの巨大な弾丸に変わって行く。そして形がしっかりと固まりその弾丸がくるくる回りながら火花を散らす。
「飛んでけーー!」
涼は引き金を引き、ダイヤの弾丸は物凄い速さでクイーンソウルイーターに突っ込みその体を貫いた。
クイーンソウルイーターは苦しみながら奇声を上げ爆死した。
「ふぅ〜終わった〜」
涼は座り込むと同時に変身が解けた。
「終わったんなら早く帰るわよ!!」
「やめろ少し休ませてくれ…」
アリシアは疲れて座り込んでいる涼を無理やり立たせる。
「いや早く戻ってみんなに知らせないとな!魔王が絡んでると分かった以上はな」
確かにあの感じじゃ奴らが剣の場所を特定するのもそんなに時間がかからないかもしれないからな。
「それに皆んなが心配だ」
「分かった…」
「ホラ、私が肩を貸してあげるから!」
「アリシア身長足りないし歩きにくいぞ」
「う、五月蝿いわね!ていうか私王女よ!最近馴れ馴れしくない涼!!」
いや姫さまがだいぶ素が出てるからだろ。
アリシア姫はこれで結構頭固くてじゃじゃ馬だからな。
:
涼達はハデスの元へ行くと魔王が紛れていた事やソウルイーターがうじゃうじゃ居た理由を説明した。
「さすが坊っちゃま!」
「その坊っちゃまは止めろよ!ハデス!」
「いやいや元使いとしてもこればかりは」
死神のボスがカイエンの元使いって世の中…いや死後も解らないもんだな。
「とにかく俺たちは帰っていいんだよな?」
「よかろう。だが二度と来るなよ!次は死んでから来い」
「どっちにしても来ないわよ!」
「世話になりました死神さん」
「いいから早く帰れ人間族」
特例で生きて帰すなんて先代様にしられたら…
カイエンがハデスに背を向け去ろうとした時。
「坊っちゃま!何故出ていかれたのですか?」
「俺は死神に向いてないだけだよ」
カイエンはそう言うとハデスのいる部屋を後にし涼達は無事に冥界からの帰還を果たした。
涼達が戻ると辺りは明るくなっていたつまり今は夜だ。
「夜はこんなに明るくなるのね」
「よし早く馬車に戻ろう」
「ていうかどうやって馬車まで戻るんだ!」
あの冷蔵庫は確かマーキングしないと一方通行の代物だったはずだ。
帰る度にの信道が調整してたからマーキングしてある場所の扉に繋がっている。
マーキングしてなければ何処かの扉がある所へ出てしまうらしい。
「大丈夫よ!カイエンのクローゼットにちゃんとマーキングしておいたから」
アリシアは首から下げた判子みたいな物を出す。これはベルが作った即席マーキング用のスタンプで押せばそこは冷蔵庫のある所へ繋がる。だが使い捨てタイプで通ったら直ぐに消えるのが難点だ。
「いつのまに…」
「私は王女よ!抜かりはないわ!」
「はいはいじゃあ帰りますか」
男三人は家の中に入る。
「ちょっと少しは褒めなさいよ!」
涼達はクローゼットに入る。
しばらく歩くと光が差し混んできたアレが馬車にある秘密基地の入り口だ。
涼は扉を押して外にでると冷蔵庫が横たわっている状態だった。
「ん?部屋が逆さまになってる!?」
「何だとっ!?」
「ちょ、何よこれ!?」
「皆んなは!?」
戻ってみると基地の中は逆さまになり辺りに家具や道具が散乱していた。
四人はくまなく中を探し回るが仲間達が誰一人として基地にはいなかった。
涼は嫌な予感がし外に出ると。
「!?」
そこには血を流して倒れているコハク、リア、ルーガルに泣きじゃくりながら倒れたマナリアに顔を埋めているベルがいた。
「ベル!」
「う…涼…ざぁん…」
「何があった!!」
「ひぐ…暑化粧女が…」
鼻水を垂らしながら語るベル。
「ベルちゃん!何があったの!」
後からきた三人も駆け寄る。
「オイ!コハク、ルーガルっ!しっかりしろ!」
「リア!賢者さま!」
カイエンと信道が必死に皆んなに声をかける。
「泥棒女が来たのか!」
「ベルちゃん?」
「ごめんなさい…であります…涼さん…姫さま…ルビ…ティラ達が…攫われてしまったであります…」
「えっ!?ルビティラ達が攫われた…」
宝石獣達が魔王軍に攫われてしまった!
一体何があったのか??
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます