第30話 魔王軍の科学者 アッシュベル

「ここにも無いか…」

「ラストアイテムが見つかりゃ俺達やっとログアウト出来るんだよな?」

「ええ、だから早くみつけないと」

涼達が向かっている村に先代勇者のカズ、カイト、アインも居た。

「やはり手がかりは王族か」

「博士本当に僕達は戻れるんですよね?」

「勿論だよ!運営側のコンタクトが取れない以上はやるしかない!それにはアレをみつけない事には」

白衣を着た眼鏡をつけた長い黒い角を生やした魔人族が先代勇者達に告げた。

「ベルゼブブ様!ここの人間は食って構わないんですよね?」

見た目が絵本に出てきそうな魔女みたいな老婆の怪人が尋ねた。

「ああ、ここには用はないから好きにしていいとも」

「ではガキを頂きますかね!」

「NPCとはいえ気持ち悪いイベントですね」

「俺達がログアウトする為だ我慢しろ」

「運営側もいい加減に早く修復してほしいよな〜じゃなきゃ俺達が壊す必要ないのに」

「おい馬鹿勇者共!」

涼達が村へ到着した。

村は焼け野原で人々が血塗れで倒れ、逃げ回って泣いている。

「な、何でありますか…これは…」

ベルは目の前の光景が信じられない。

「またお前か特撮馬鹿!」

「本当に貴方達はヒマなんですね…」

「お前らには用はない失せろ!そうすれば見逃してやるよ」

何か余裕かましてるな…

「ん?誰だアイツ!」

涼は白衣を着た魔人族に気がついた。

「に、兄様!」

「兄様!?」

「あれ?ファーリーヌじゃないか!」

「兄様これは何でありますか!」

「見ての通り仕事さ!」

これが仕事でありますか…どうみても殺戮であります。

「兄様!軍のエリートになって開発部の責任者になったじゃないでありますか!民を守る為の発明と言って力を奮っていたんじゃ!」

「ベルちゃん?何の話なの?それにあの人は?」

「やあ、君たちが噂のホウキュウジャーかい?」

爽やかに挨拶をしてる謎の男。

「お前は誰だよ!」

「僕はアッシュベル!アッシュベル・ガム・ベルゼブブ卿だ!」

「私の兄であります…」

お前の兄ちゃん!?

「妹が世話になったね!」

「兄様話を逸らさないでであります!一体何をしてるんでありますか!」

「だから仕事だよ!」

「人殺しが仕事だってのか!」

俺は指を向けた。

「実験には犠牲がいるんだ、それに生き物からじゃなきゃ取り出せないからね魔宝石はね」

魔宝石??

「ま、魔宝石って兄様、それは生きてる生き物の魂そのものでありますよ!」

「魂その物って…」

「涼、魔宝石ってのは俺達の力の源のアレだ!」

前に姫さんが説明してた誰もが持っている、心に宿る宝石。

「ちょっと待てよ!まさか、お前らが人間を襲っていたのは人の心にあるって言う宝石を奪う為か!?」

「ご名答!何分宝石獣達だけではプロジェクトを実行出来ないから集めているんだ!」

「兄様、宝石を奪われたらその人間は死ぬんでありますよ!わかってるんでありますか!」

は!?死ぬ…

「これは必要な犠牲なんだ!」

「必要な犠牲だと!?」

コイツ自分が何を言ってるのかわかってるのか!?

「僕達がログアウトする為ですよ」

「別にいいだろ直ぐ復活するんだし〜」

「ゲームを一度リセットするからなまた幾らでも復活する。お前も知ってるだろ?」

「ふざけんなよ!毎度毎度お前らはゲームってよ!ここは仮想世界じゃないんだよ!何でそれが判らない!」

俺はたまらず声を上げてしまう。

「貴方のゴーグルは壊れてるんですか?」

「ディスプレイ画面が見えないのか?」

「大方壊れたんだろチートのしすぎでよ!」

ゴーグル?ディスプレイ画面?コイツら本当にゲームの画面でこの世界にいるって言うのか!?ありえない何でそんな…

この勇者達は目の前がVRゴーグル越しのゲームの画面のままこの世界にいるだって?それが100年間そのままなのか???

「訳わかんない事抜かしてんじゃねぇ!」

「人の命を実験材料とは外道な!」

「ここまで落ちた事を平気で出来るとはな!」

「許せません!」

「アレが祖父さんの仲間とはな…泣けてくるな…」

皆それぞれ宝救剣、宝救丁を構える。

「今日こそ判らせてやる!!」

俺も宝救剣を引き抜く。

「この前と同じと思うなよ!チーター野郎!」

「同じ様にはいきませんよ!」

「新しい凶宝剣は一味違うぜ!」

カズ達も凶宝剣(まほうけん)を構えてハンターストーンをはめ込む。

ハンター!ザ!武装!

「俺達も行くぞ!」

涼達も宝救剣にチェンジストーンをとチェンジエッグにチェンジストーンをはめ込む。

レッド!ザ!武装!

ブルー!ザ!武装!

ピンク!ザ!武装!

グリーン!ザ!武装!

ブラック!ザ!武装!

ヘイ!とりあえず!ゴールド一丁!

「「「狩人武装!」」」

「「「「「武装!」」」」」

「乾杯!」

各勇者達の剣から光が溢れ出し身体に纏い鎧を構成し身に纏い、最後に各パートナーの宝石獣を模したヘルメットを装着し変身完了!

「「「我らハンターズ!」」」

「宝石戦隊!」

「「「「「「ホウキュウジャー」」」」」」

最後に花火が上がる。相手にも上がるのかよ。

「は、派手であります…」

ぽかーんとなるベル。

「格の違いを教えてる!」

「行きます!」

「チーター共覚悟しな!」

ハンターズに変身した先代勇者が武器を構えて斬りかかって来た。

「お前らこそいい加減にしろよ!」

俺達も武器を構えてハンターズを迎え撃つ。

「部が悪いですね!」

アッシュベルが指を鳴らし兵士達を呼び出し加勢に向かわせた。

カキン!カキン!と両者の剣がぶつかり合い激しい火花が飛び散る。

しかも、ハンターズだけじゃなく、沢山の兵士や怪人までいる為数ではかなり負けている。

「 おらおら!」

カイトはプテラ大剣を取り出し信道に斬りかかる。信道は宝救丁からビームの刃を大剣とぶつけ滑らせ交わすと濁酒銃をカイトに向けて弾を放つ。

「おっと!」

カイトは凶宝救を引き抜き胸に当て弾を弾いて防いだ。

「アレを交わすかのか」

信道もびっくり。

「よそ見ですか、おじさん!」

アインはスティラコバズーカをブッ放す。

「おっと危ない!」

ドッカーーーン!

「うわ!」

近くにいたコハク達も巻き添いを喰らう。

「前よりパワーが上がってないか!?」

コハクの言う通りだ。以前より遥かにパワーが上がってる。

「ち、外しましたか!」

「味方まで巻き込むか普通!」

「交わせない人が悪いんですよ!」

アインは再び球を放つ。どうやら単発式みたいだな。

信道も濁酒銃のシリンダーにチェンジエッグを装填しシリンダーを回した。

シェイク!シェイク!シェイク!〆の一杯!

「雷酒一撃!」

濁酒銃か必殺の雷の弾丸を放ちスティラコバズーカの球と当たり大爆発した。

爆風で皆も吹っ飛ばされる。

「くそ!邪魔だお前ら!」

「キリがないですぞ!」

ルーガルとカイエンは兵士達が邪魔で仲間の加勢に迎えなかった。

「コハク!このままじゃ!」

「わかってるが!無理だ!」

リアとコハクは兵士達を相手にしながら怪人まで相手をしているから手が回らない。

「みんな!クソ!」

「お前一人なら首を取るくらいは容易い!」

「言ってくれんじゃないかよ!」

涼のティラノファングとカズのカルタノファングがぶつかり合い激しい衝撃波が発生する。

「これが今行われてる戦いでありますか…」

「素晴らしい!私が作り上げた凶宝剣の力!試作品以上の出来ばいだ!」

「兄様があの剣を作ったんでありますか!?」

兄様があの偽物を作ったでありますか!?

あの剣…そうとうヤバイ代物であります。

ベルはあの偽物の凶宝剣を見ただけでどんな代物かを解釈した。

「ああ、素晴らしいだろ!先代勇者のポテンシャルも相まって彼らを圧倒している!」

「兄様!あの剣は…あの剣はどんだけの命を犠牲にしたでありますか!!」

「材料費?そうだな魔宝石の塊であり宝石獣と一般の宝石をやく600個くらいかな〜」

600個って…600人の命!!それに宝石獣まで使ったでありますか!

「な、何んて物を作ったでありますか!私達はただ、未知なる鉱石を求めてこの世界に踏み入れただけじゃないでありますか!なのにあの剣はあの怪物は何でありますか!兄様!」

「未知なる鉱石を何故探したか、知ってるのかファーリーヌ」

「そ、それは新しい開拓のためにと聞いたでありますが」

「違うよ、初代魔王陛下の為さ!」

「初代魔王陛下って」

「この世界は美しい宝石に溢れている、ここなら採掘場として申し分ないからね」

「何んの話でありますか?」

「魔王陛下をよみがえせる為の莫大なエネルギーの採掘場がこの世界なのさ!」

「初代魔王陛下を蘇らせる…」

一体何を言ってるんでありますか?初代魔王陛下はもう何千年も前に死んだであります。

:

今まなお交戦中のホウキュウジャー達。

「お前らは一体何でこんな事をするんだよ!」

「俺達がログアウトする為だ!これはそのイベントだ!」

涼とカズが剣を交えながら語る。

「ログアウト?」

「俺達はジュエルRPGオンラインというゲームをしててな、そっから出られなくなったんだ、お前もそうなんだろ?」

「出られなくなった!?お前達は勇者石に導かれたんじゃないのか!?」

「勇者石?何の話だ?」

本当に知らないのか?つか本当にゲームの世界と思ってる!?俄かには信じられないが、こいつが言ってる事が本当なら今までのコイツらの行動にも納得はいく。

「涼!このままじゃ!」

「長引いたらこちらがヤバイですぞ!」

周りを見たらさっきより兵士が増えていて皆かなり消耗している。

このままじゃ加勢にも行けずコイツらをどうする事も出来ない。

「話は終わりだ!」

カズが斬撃を放つ。涼はティラノファングで受け止めるが耐えきれず吹っ飛ばされた。

「うわ!」

「終わりだ!」

カズは凶宝剣から黒い斬撃を涼に放つ。

アレはヤバイ…涼は防ごうとするがティラノファングが無い。ヤバイ今ので外れたか!

「ティラ!」

「何!?」

ルビティラが巨大化した姿で現れて尻尾で攻撃を弾いた。

「みんな大丈夫!?」

「ウガァァァ!」

ルビティラも雄叫びをあげた。

ルビティラの背中にアリシア姫が乗っている。

「姫さん、ルビティラ!!」

ルビティラに跨りアリシアが助太刀に来た。

背後には巨大化した他の宝石獣達もいる。

「みんな!」

「来てくれたのか!」

「有難い!」

「にくいなお前ら!」

「姫様ナイス判断!」

「えへへ!さあ皆んな雑魚を蹴散らして涼達を助けて!」

他の宝石獣は行く手を阻む兵士達を蹴散らしていく。

「行くわよ!ルビティラちゃん!」

「ティラ!!」

ガッテンだ姫様!とルビティラは走りだした。

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