山際、少し明かりて

薄い太陽光が病室を照らす。

カーテンに塞がれていて、外の景色は見えない。

朝なのか?

それとも、夕方なのか?

時間の感覚は無い。

たくさんのチューブに繋がれながら、敗北したこの無惨な存在について自問自答していた。


どんな努力も、どんな我慢も、どんな行動でも、その壁は破れなかった。

何をやっても、生涯、この世で独り……。

何もせずに時間が流れても、この世で独り……。

何かをして世間を騒がせても、この世で独り……。

全てを終わらせようとして騒いだところで、この世で独り……。

私の存在は何だったのか……。

誰とも繋がれなかった。


薄い太陽光が私を照らす。

その薄さが、柔らかく包み込んでくる感じだった。

私は、力の限り、生きたつもり……。

もう、終わってもいいんじゃないかって、呼びかけられているようだった。

奇妙な安心感や達成感が私を包む。


山際、少し明かりて。

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