地下1階のポエム
ポエムをネットで発表している。
私の場合は、詩的な文章(詩・散文・日記・コラム・愚痴)だけど……。
世界の人々も、ポエムをネットで発表している。
あるとき、世界中の人々が書き込んでいるSNSにログインして、いろんな人の作品を見ていた。
すると、その中の一つに、日本語で書かれたポエムがあった。
その内容を要約すると……。
『入院をしてしまい、今まで当たり前のようにあった日常が無くなった。病院にいることへのもどかしさに加え、つい先日まで、健康で幸せに生きている人々の輪の中で楽しく過ごしていたのに、それを外から眺める立場になったことで、日々の当たり前がどれほど大切かということに気づかされた』
という、何とも薄っぺらい内容だった。
しかも、そんなポエムにもかかわらず、世界中からたくさんのいいねと、高評価のコメントが寄せられていた。
私は、あまりの世界観の違いに愕然としてしまう。
なぜなら、天涯孤独の私では、この人と同じ立場にはなれないからだ。
日本は、血の繋がりを重要視する家族主義国家である。
就職するにも、家を借りるにも、入院するにも、手術をするにも、生命保険・医療保険に入るにも、家族主義を前提に、必ず保証人(連帯保証人・指定代理請求人)や緊急連絡先を求められる。
求められないケースは、相手方がブラックのときだけ……。
今までそれが原因で、散々、相手方と喧嘩してきたし、殴りかかったこともある。
弁護士を付けて喧嘩をしたこともある。
天涯孤独の私は、もちろん入院できないし、保険に入ることもできない。
まぁ、昔に比べたら、何が何でもダメという感じではなくなったけど……。
「保証人がいないので入院できません」
「保証人がいないので手術できません」
「指定代理請求人(家族)がいないので保険に入れません」
毎回、頭ごなしにそれを言われて、まず、喧嘩からスタートするので、こっちも、そんな病院に長く居たいとは思わない。
たとえ救急搬送で運ばれてきたとしても、日付が変わる前に脱出しなければならない。
人生が壊れた今、前にもまして、保証人を求められた時点で殴り掛かってしまう。
日本の病院は、毎回、必ずそうなので、もう、うんざり……。
というわけで、そんなポエムを書いている奴なんて、恵まれた環境でヌクヌクと生きてきた奴が、贅沢な悩みを打ち明けているに過ぎない。
私とは、雲泥の差だ。
それに、当たり前のように家族がいて、当たり前のように住む家があって、当たり前のように友人がいて、当たり前のように恋人ができて、当たり前のように結婚できて、当たり前のように子供がいる、または、そのどれか一つでも叶えられている恵まれた人生を送っている奴だと、すぐにわかってしまうね。
私から見ると、まるで、地上と地下1階のやりとりを、上に行く通路や階段が存在しない地下100階から眺めている感じなんだよ。
私は、家族なし、友人なし、恋人なし、結婚なし、子供なしで1回きりの人生を終えた。
もし、君が、私と同じ立場だったら、そんなポエムは書けない。
地下1階に下りたことで、地上で暮らすことの幸せに気づいたのなら、地下100階まで下りてくれば、地下1階にいることの幸せに気づくことができると思うよ。
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