無念

『無念』という言葉を辞書で調べると、主に意味は2つ……。


『仏教において全ての雑念を取り除いて、無我の境地に入ること』

『物事が思い通りにいかず悔しいこと』


一般的には、無我の境地という意味では使わない。

悔しい・悔いが残るという意味で使われる。

私も長年、後者の意味で使ってきた。

ただ、不思議なことに……、気が付いたら、前者の意味に変わっているではないか……。


私は、家族なし、友人なし、恋人なし、結婚なし、子供なしで1回きりの人生を終えた。

この30年間、この世に会話の相手とメールの相手が1人もいない。

別に、好きでこんな人生を送ったわけではない。

むしろ、これとは真逆の人生を送りたかった。

みんなと同じようにね。

このまま終わってたまるか!と、もがいていた頃は、常に、悔しい・悔いが残るという意味の無念で埋まっていた。

ただ、加齢により、ありとあらゆる人生の可能性が消滅したとき、無念の意味は、後者から前者へと変わった気がする。

『本当の孤独』が支配する世界は、仏教でいうところの、そういう場所なのだろう。

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