砂時計

私は、砂時計の砂瓶の中にいる。

生まれてから今まで、ずっと、そこにいる気がする。


愛し合う男女が、砂時計を手に取った。

2人は、砂時計をひっくり返しながら、砂が落ちる様子を観察していた。

私は、砂瓶の中から、そんな2人の姿を幾万と見てきた。

砂時計がひっくり返されるたびに、私はアリジゴクに食われる蟻のように沈んでいく。

挫折なんて言葉を私のようなゴミが使うのは違和感があるけど、それを繰り返すことで、私の持って生まれた能力(外見・性格・身体的能力・知能指数(IQ))を知ることができた。

つまり、能力の無い人間だったという事実を、確固たる人生経験で知ることができた。

可能性という不安定な部分を塗り潰したことで、後悔の領域を限りなくゼロにした。

それと同時に、贖うことすら許されない運命に屈服したゴミであることも証明した。

私には、初めから、アリジゴクに食われる蟻のように、落ち続けるだけの人生しか存在していなかった。


今日も、愛し合う男女が、砂時計をひっくり返している。

私は、そんな2人の様子を見ながら、今まで何十年と繰り返してきた『ただ、何もできずに負け続ける』という現実に、今も翻弄されている。

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