もっと強く……

もっと強く……、もっと強く……。

もっと強く……、もっと強く……。


追い詰められたとき、いつも思う。

弱音を吐いたり、悩みを吐いたりする場所なんかどこにもない。

生涯をたった1人で生き抜くには、強くなるしかない。


もっと強く……、もっと強く……。

もっと強く……、もっと強く……。


どんな手段を使っても強くなるしかない。

たくさんの人間を踏み台にして、強くなるしかない。

この世で1人の現実を受け止め、強くなるしかない。


もっと強く……、もっと強く……。

もっと強く……、もっと強く……。


どんな薬を使っても、どんな違法行為をしても、強くなるしかない。

必ず一番にならなければならない。

他人との競争には、絶対負けてはならない。


もっと強く……、もっと強く……。

もっと強く……、もっと強く……。


ただ、現実は……、融解点の一歩手前で踏ん張る氷のようだった。

無限に広がる氷の大地も、たった1℃、温度が上がるだけで全て溶ける。

私も『弱い人間』という現実を隠すために、それを全て、氷で覆っていた。

残念ながら、その氷は、全て溶けてしまった。

もう、頑張れない。

終わったんだ。


時折、夜空を見上げながら思い出すことがある。

若い頃、究極のポジティブ思考を掲げて、もがいていた私の姿を……。

そういう思考や、そういう行動は、全て無意味だとも知らずに自分に言い聞かせていた言葉がある。

それが……。


もっと強く……、もっと強く……。

もっと強く……、もっと強く……。

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る