帰路
午前2時過ぎ、残業を終えて帰路につく車の中にいる。
深夜の道は、どことなく寂しさを感じる。
車は、全然、走っていない。
1回きりの人生について、いろいろと考える年齢だ。
仕事は今のままでいいのか、転職をしようか、起業しようか……。
私生活は今のままでいいのか、都市部に住むべきか、田舎に住むべきか……。
恋愛が1度もできずに終わっていいのか、結婚をするべきか、子供をもつべきか……。
将来設計は難しい。
どうせ思い通りにならない。
変化を実行するにせよ、現状維持を選択するにせよ、ギリギリの年齢だ。
この年齢を過ぎると、おそらく死ぬまで何も変わらない。
だからと言って、何をどうしたらいいのかわからない。
ああ……。
天涯孤独の1人暮らしは、疲労という世界観の中で、常に焦燥感にかられる。
この世に、会話の相手とメールの相手はいない。
今から、誰もいないあの部屋へ帰る。
ゴミが散乱するあの部屋へ帰る。
秒針の音しか聞こえないあの部屋へ帰る。
私の人生は、いったい何だったのか?
何のために存在したのか?
何もできずに、若い時間を失った……。
私は、その事実に目を背けて、これから何に拠り所を求めるのか?
考え事をしながら、ただ惰性だけで、深夜の道を走っている。
今、事故を起こしても、私はなぜ事故を起こしたのかを覚えていないだろう。
静まり返った交差点に差しかかった。
誰もいないのに、一旦停止する。
誰もいないのに、左右を確認する。
そのまま精神がフリーズして、しばらく停車したままという状態になった。
点滅信号が、私を照らす。
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