9番ホーム 【詩】

駅にいた。

1番ホームに電車が停車中。  

『箸を使える人号』

行ってしまった。

私、乗り遅れた。


2番ホームに電車が停車中。

『1人でトイレに行ける人号』

行ってしまった。

私、乗り遅れた。


3番ホームに電車が停車中。

『おねしょ、しない人号』

行ってしまった。

私、乗り遅れた。


4番ホームに電車が停車中。

『さかあがりができる人号』

行ってしまった。

私、乗り遅れた。


5番ホームに電車が停車中。

『友達を作れた人号』

行ってしまった。

私、乗り遅れた。


6番ホームに電車が停車中。

『デートをした事がある人号』

行ってしまった。

私、乗り遅れた。 


7番ホームに電車が停車中。

『恋人を作れた人号』

行ってしまった。

私、乗り遅れた。 

   

8番ホームに電車が停車中

『セックスをしたことがある人号』

行ってしまった。

私、乗り遅れた。


もうホームがない!

全ての電車が行ってしまった……。

何もできずに時間だけが過ぎてしまった。

人生の可能性が消滅してしまった。

無念の死だけが、私に残された。


どれくらいの時間が経過しただろう?

随分と、歳を重ねた気がする。

この暗闇の世界は無限に続いていると思ったのに……、あるとき突然、ホームが現れた。

電車が止まっている。

2両編成だ。

私は迷わず飛び乗った。

「やっと乗れた、やっと乗れたよ」って、安堵した。

でも、乗客は、私1人しかいない。

車内アナウンスが流れる。

「同年代の幸せと成長を尻目に、自己嫌悪に陥る方は1両目の自殺行きへ、怒りや憎悪に満ち溢れる方は2両目の殺人行きへ移動してください。あっ、そうそう、乗客の方に逃げ道はありません」

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