第6話 久々の学校へ
俺が登校拒否をしてまで生まれ変わろうと決意してから、ついに二ヶ月が経った。
色々と大変だった。ああ、大変だったさ。
学校も正直煩かったけど、母さんのダイエットがまさに地獄だった……。
母さんの美味しい手料理に餌付けされていた俺は、ダイエット用の食事に切り替わった瞬間絶望した。
量が、少ないんだ。
それでも俺は、自分に生まれ変わる為だと言い聞かせて、乗り切った。
あっ、学校の件は本当やかましかった。
不登校になった瞬間、担任が何度もうちに顔を見せたんだ。
玄関で土下座をして「登校してくれ」って叫んだり。
だが、父さんと母さんは当然許さなかった。
「貴方担任でしょう? それなのに、僕の息子がいじめにあっていたのに見て見ぬふりをしましたね。貴方が辞めるまで僕は息子を登校させるつもりはありません」
「そ、そんな! お願いします、どうか登校するように親御さんからも言ってください!!」
「何故そんな必死なのかわかりかねますが、どうかお引き取りを。後十秒以内に出ていかないと、警察を呼びます」
父さんのこの言葉を聞いた瞬間、脱兎の如く逃げる担任。
俺がいじめられてる時、あの人は確かに見て見ぬふりしてたよなぁ。そして今も脅されたらさっさと帰ったし、教師としては本当にダメな人だと思う。
その担任は追い出された日から、我が家へ来る事はなかった。父さんに脅されたのが堪えたらしい。
さて、ついに約束の二ヶ月が経った。
学校には今日から登校すると伝えている。
長かった。本当に長かった。
前世でもここまで地獄を見た事はないんじゃないかって位、本当に苦しかった。
しかし、地獄を見た甲斐はあったと思う。
「うん、バッチリよ、玲音ちゃん!」
『いやぁ、玲音君は僕に似てしまったから申し訳ないと思っていたけど、やっぱり母さんの血もしっかり受け継いでいるね』
母さんは日本語で、父さんは英語で俺を褒めてくれる。
この二人は確かに俺を溺愛してくれているけど、無条件で肯定は絶対にしない。
だから自信を持って言える。
俺のダイエットは、大成功したんだ。
今の体型に合わせた制服だって買い直したし、髪も気合いを入れてセットした。
準備は万全だった。
「はぁぁぁぁ……。まるっまるとしていた玲音ちゃんの方がやっぱり素敵だったのにぃ」
「そっか、母さんは今の俺は好きじゃないんだね」
「っ! そんな訳ないでしょうぅぅ!!」
むぐっ。
俺の顔半分が母さんの豊満な胸の谷間に埋まる。
過激な愛情表現だ。
すると父さんが真剣な表情をした。
『玲音君、
『うん、わかってる』
俺は父さんとある約束をしている。
父さんは俺の事を色々と心配してくれている。だから約束をする事で、とある行動に関しては制限されているような形になっている。
だからと言って俺はあまり困らないから大丈夫、だと思う。
『なら心配ないね。ほら、お隣の田中君を待たせているだろう?』
『あっ、そんな時間か! じゃあいってくるよ、父さん、母さん』
『いってらっしゃい、玲音君』
「いってらっしゃーい♪」
二人共、玄関で俺を見送ってくれた。
うん、この二人だけは絶対に俺の味方でいてくれる。
それだけで俺は心強いし、前向きに生きていける。
いい両親の元に転生出来て、本当によかった。
俺は玄関のドアを開けて外に出た。
別に引きこもっていた訳じゃないけど、制服を着て外に出るのが久々でとっても新鮮だ。
「よっす、家……いり?」
「何で疑問系なんだよ、田中」
「いや、だって、お前……。変わり過ぎだろう?」
「田中の反応を見る限り、ダイエットは大成功だな」
一ヶ月ぶりに見たお隣の田中は、俺の姿を見て呆ける位ビックリしていた。
よしよし、こりゃクラス全員の度肝を抜かす事が出来るだろうよ。
「……なぁ、家入。俺がお前の隣を歩いていいのか?」
「いいに決まってるだろ。俺は田中の事、友達だって思ってるからさ。地獄の二ヶ月を乗り越えられたのだって、お前がスマホで構ってくれたからだし」
そう、死ぬ程辛かったダイエットを乗り切れたのは、田中とメッセージアプリでやり取りをしていたからだ。
俺の愚痴にも付き合ってくれて、ありがたかったんだ。
「……家入。そう言ってくれると何か照れるな」
「あっ、でも俺、ノンケなんで。惚れるなら別の男に惚れてくれ」
「俺だって男に惚れないわ!!」
「信じてるぞ、田中」
頭を照れ臭そうに掻いてはにかんだ笑顔を俺に向けてくる田中に、一瞬悪寒を感じた。
大丈夫だよな、信じていいんだよな、田中?
「んじゃ、いっちょクラス全員を驚かせに行こうぜ、家入!」
「おう。どういう反応を見せてくれるか、楽しみだ」
クラスの皆がどういう反応を見せてくれるのか、それが楽しみで俺は地獄を耐え抜いてきたんだ。
いいリアクションを待っているからな?
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます