エピローグ 語り部は嗤う
一縷の光もない暗闇に佇む黒いコートを着た少女が、恭しく頭を下げる。
いかがでしたか?
夜空から下を見下ろす恥ずかしがり屋なセレーナや、あるいは空に浮かんだ見ているだけの傍観者であるステラ達から私が聞いた、少し変わった愛のお話。
え?奇跡なんて起こってない...ですか?
まぁ、...確かにそうかもしれませんね。
ですけれど、私は先に前口上で述べさせて頂きました。
奇跡の大きさは人によって違います、と。その人間の基準によって、奇跡かそうでないかが決まるのです。
健康な人間にとって何不自由ない生活は当たり前でしょう?ですが、病気を患う人間にとってはそれこそが奇跡なのです。
詰まるところ、奇跡なんてそんなちっぽけで、どうしようもなく人によって造られる身勝手なものなのです。
...あぁ、申し訳ありません。語り部として、変に物語に介入してしまいました。
私は常に中立として、語らなければならないのに。ついついこう熱くなってしまうのを何とか制さねばなりませんね。
失礼致しました。
おや、そろそろ終わりの刻が近づいて参りました。
貴方の目はもう覚める頃合いですよ。
そんなに残念がらなくても結構ですよ。大丈夫です。
また貴方に運があればここへ訪れる事は出来ますから。
ほんの少しのお別れでございます。ご辛抱下さい。
それでは、またお会い出来る日まで。
新たなお話を仕入れておきましょう。
この暗闇で私はずっと待っていますから。
一縷の光もない暗闇に佇む黒いコートを着た少女は、ただただ嗤っていた。
星降る夜の物語 本田玲臨 @Leiri0514
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