忍隊より

「どういうつもりだ?」

「や、怒んないでよ。好きなもんは仕方ないじゃん。」

 夜影にとっては、大きなことじゃない。

 夜影は、才造が他に目移りしたとしても、才造ほど思うような性格じゃないだけだ。

 だが才造は違う。

 その重さも、また好きといえば好きなんだけれど、と夜影は笑うだけだ。

「好き、だと?彼奴の、目が?」

「正直に言うと、色々と好み。」

 部下からすれば、何故火に油を注ぐようなことを言ってしまうんだ、と呆れていた。

「まぁ、そう怒るな。」

 頼也は面白がって夜影を後ろから抱き締め、宥めるような言葉を言う。

 才造の目付きがさらに悪くなってしまった。

「頼也、今すぐ離れろ。殺されたいのか?」

「安心しろ。俺に恋愛感情はない。あくまでも親友として、影を見ている。だからといって何もしないとは言わないが。」

 夜影は無自覚で火に油を注ぐが、頼也に至ってはわかっていて火に油だ。

 しかも夜影はそろそろ飽きてきているようだ。

 才造から目を離し、何処か宙を見つめている。

「あ”?」

「手を出す、とも言ってない。」

「表へ出ろ。」

「断る。」

 才造の面倒臭さは愛の重さ。

 見た目に問題はないのに、性格に問題が大有りだな、と部下は笑った。

「ちょいと出かけてくるから、才造が終わったら伝えといてねー。」

 いつに抜け出したのか、夜影がサラリと飛び立った。

 今や、頼也と才造の喧嘩である。

 いつ、終わるのやら。

「依頼、どうするよ?」

「長が遊びに行ったからな。」

「休もうぜ。どうせ下手に動けないだろ。」

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