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「配慮が足りなかった事は謝る、だが早急に頼みたい」
グラスを置き真っ直ぐに店主と向き合う。隣の彼は我関せずと眼前のホットミルクを啜っているところだった。
「…態度は合格だが其れだけに面倒な気配が拭えんな、まぁ聞くだけ聞いてやる」
一通り接遇を済ませたつもりの店主は御自慢のコレクションに手を伸ばす御決まりの動作に入る。我々を含め街中の誰しもが動きのとり難い現状で腰を据えて話を聞く心算になってくれただけ感謝しなければならないと思った。
「掃除屋の雇い入れが多発してるって噂、アレは間違いないのか」
我ながら切り出し方が遠回りに思えたが前提を組み立てなければ本題に入れない以上已む無しと腹を括る。
「あぁ、片端から声がかかっているらしいから全員の動向は追い切れていないがそう言う動きは確かに有る」
店主は私の問いに最低限の補足を行いながら肯定し話の先を促している。
「俺は同業と…元同業とは交流が無かった、顔も名前も腕前も得物も知らない」
隣席から聞こえた咳払いに言葉を改めながら話を続けた。
「何が気になるのか知らんが全員分となると高くつくぞ」
私達の遣り取りが滑稽だったらしい店主は笑い顔を隠さず答える。
「いや、知りたいのは一人、使う得物も珍しいから特定も容易な筈だ」
懐からメモを取り出し店主に差し出す。
「何だ、上客かと思ったら手間賃までケチろうってか」
溜息交じりに悪態を吐く店主は受け取ったメモを覗き見て「ほう」と小さく呟いた。
「スターリング・パチェット?確かに中々見ない年代物だな」
私も目の当たりにした時には自身の目を疑ったが特徴的な寸胴のサプレッサーは遠目にも間違えようがない。
「払い下げにしても一世代遅い、年の頃が分からん以上何とも言えんがもしかすると従軍経験者かも知れんな」
既に店主の脳内では対象の絞り込みが始まっているらしい。「奥の資料を見てくる」と言ってカウンターを離れた店主を見送った私は二杯目を半ばまで注いだ所で隣席から小突かれた。
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