第22話:上司として
こいつにとって俺に抱っこされることはそんなに大事なのか? だいたいまだ話は終わってないつうの。
「今は身長より気にするべきことがあるだろ」
「あら、そんなことあったかしら?」
「あるだろ、大ありだろ!」
「ちょっと、人を抱っこしてる時に大声出さないでよ。耳に響くわ」
ねえ、下していい? いいよね? 話の内容的に気を使って抱っこしてたけど、なんかもう下したくなってきたんだけど。
「それは悪かった。今度から気を付けるから話を進ませてくれ」
「今度からってことは、これからも私をこんな風に抱っこしてくれるのかしら?」
「それはこの後の話次第だな」
「既にそこまで考えてるなんて流石ね。この状態でそんなカッコいいところを見せられちゃったら……濡れちゃうわ」
こいつ本当に14歳か? どうせハイスペック人間を作る過程で性知識も教えられたんだろうけど、下ネタまで教えんでもいいだろ。それともセリアのキャラか?
「それで、実際のところどうするつもりなんだ?」
「う~ん、ソウジならどうするのかしら?」
俺が一番恐れていること。それはセリアの存在が他国の貴族共にバレて嫁に寄越せとか言われた場合だ。勿論セリアがその相手と結婚したって言うなら話は別だが、その確率は低い。そうなれば相手は俺が消したボスニア王国前国王の一人娘であるセリアの存在を利用して何かしらしてくるに決まってる。
特にこの国の住民にその事実をバラされるのはかなりマズイ。そうすることによって暴動が起きることは確実、その隙を突いて戦争を仕掛けてくる可能性すら有り得るのだ。
じゃあどうするか。俺が考えられる最善策は
「俺がセリアと結婚するのは……まだ嫌だから、婚約者として発表する…だな」
大々的にセリアとの婚約を発表することによって、まず俺のところに嫁ぎに来いと言えなくなる。それに俺と婚約することによって事実とはいえ下手なことを言えば最悪戦争が始まる。
まあ、ここまでの話を実現させるには必ず俺がこの国の王じゃなきゃいけないんだけど……まだ正式な宣言はしてないし。
「これはちょっと変わったプロポーズかしら?」
「どう考えても違うだろうが。俺ならどうするっかて言うから自分が考えられる最善策を言っただけだ」
「でもそれが最善策と言うならそれはもうプロポーズみたいなものじゃない」
もしかして……セリアに嵌められたか? いや待て待て待て待て待て。落ち着け、相手はハイスペック人間とはいえまだ14歳の子供。そこまで頭が回るわけ………ある! 絶対にある‼
「逆に聞くけどセリアは俺なんかでいいのか? 今日初めて会ったばかりの異世界人だぞ」
「今の私にはあなたと結婚する以外の選択肢はないわ。それに、今のところソウジのことは好きだし」
「今のところ……ね。なら言っておくがセリアの親を含め俺が消した奴らは全員まだ生きてる。だがいつかは殺すことになるだろう。それでも俺のことを好きでいてくれるのか?」
「………ちゅ……んっ。……ふふっ、これが私の答えよ」
ん? なに今の? もしかして……
「おまっ、もしかしてキスした? 俺まだ一回もしたこと無かったのに⁉」
「私も初めてよ。旦那様♪」
セリアに俺のファーストキスを奪われた後、取り敢えず旦那様呼びを止めさせキッチンに戻ると
「随分と子供達と仲良くなってるじゃねーか、アベル」
「お前、今までどこに行ってたんだよ」
「悪い悪い。んで、どこまで終わったんだ?」
「坊主が運べって言った食器類を子供達がテーブルに全部並べて、座る場所を決め終わったところで坊主が戻ってきたって感じだな」
タイミング的には丁度良かったか。
「それじゃあ次ぎはコップとこの……飲み物を持っててくれるか?」
「「「「「はーい!」」」」」
よし、あとは五人が働いてくれてるうちに
「アベル、そこの鍋持って着いて来い」
「ん? ああ、このデッカイ鍋か……おもっ⁉ なんだこの鍋、重すぎだろ!」
「それ一個で六十人分のカレーが入ってるんだから当たり前だろ。あと三つあるから頑張れよ」
ちなみにこのカレーを持って行く場所は騎士団の寮だ。その為最悪でも百三十人分プラス警備兵の二十人分は必要になり、そこからおかわり分と甘口・辛口の二つを用意したら業務用の鍋が四つになってしまった。
「お前も一個くらい持てよ!」
「おいおい、アベルが持って行くことによって騎士団内での人気を高めてあげようという俺の心遣いを無下にする気か?」
「こんな見たこともない食いもん、俺が持って行ったところで坊主の評価が上がるだけだろうが」
「チッ、バレたか。……よっと、ほら早く行くぞ」
「そうだ、坊主には収納ボックスっていうチート魔法があるんだった‼ ならこれも一緒に入れろよ!」
どうせすぐに自分で持つことになるんだから無視しよ。
「おい、ここ玄関なんだけど。まさかとは思うが……俺にこれを持って外に行けとか言わないよな?」
「いや、外には出ないで済むから安心しろ。この壁に四角い板みたいなのが貼り付けられてるだろ? これに触れると……」
「おおっ! いきなり光ったぞ」
「んでこの画面にいくつか項目があるから行きたい場所を選択する。今回は騎士団の寮な……ぽちっと。はい、これでそこのドアを通れば寮の玄関に到着出来ます」
「はあ⁉ そこのドアって、これ玄関のドアだろうが。一体どういう仕組みしてんだよ」
「ただの転移魔法の応用だろ。あっ、言っておくけど誰でも使えるわけじゃないし、人によって行ける場所は限られてるからヨロシク」
俺が許可した人しか使えないのは勿論、その人達ならどこにでも行けるとかだと日本にも行けちゃうからな。それは困る。
「ちなみに帰りはどうなるんだ?」
「今俺がやったのと同じことをすればここに帰ってこられるぞ。はい、いってらっしゃ~い」
それから数分後………。
最後の一つを運び終わって戻ってきたアベルにカレーライスの写真が写された紙を一枚渡し
「はい、こんな感じに盛り付ければ完成。ご飯は寮の炊飯器に入ってるからそれを使ってくれ。絶対に開けるなって張り紙しといたからキッチンに行けば分かるはずだ。あとは……ほら」
「今度は大量の袋かよ。中身は……って、これ全部高級な酒じゃねーか! どうしたんだよこんなに」
「ミナ達が面接をしてる間に前の城から回収したやつだから、俺に頼んで分けてもらったって言っていいぞ」
「子供のクセして気なんて遣うんじゃねえよ。ちゃんと坊主からだって伝えるっつうの」
「うるせぇ、部下に手柄を用意してやるのも上司の仕事だろうが。それ持って一緒に飯食いながら飲んで来いよ」
ただでさえアベルは新入りなのに、それに加えていきなり騎士団長になったのだ。今後のことを考えれば騎士団内でアベル自身の株を上げておいて損はないだろう。
「上司様がそう言うなら従いますよ。サンキューな」
「おう、でもある程度楽しんだらこっちに戻って来いよ。俺の世界の酒も飲ませてやるから」
「マジでか! そういうことなら酔い潰れないように気を付けるは」
お前、酔い潰れるまで飲む気だったのかよ。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます