第99話「汝、慢心するなかれ」
「とりあえず。本はこれで全ての様だな」
だというのに本棚にはまだ隙間があるが、全然問題はない。なぜならおっぱいお化けにしろ幼女にしろもともと野生動物が竜となり、更につい先日人の様な姿になったばかりの存在だ。つまり、まだ文字が読めない筈なのだから。
「おいおい教えて行かねばならんだろうが」
現状でこの部屋に足を踏み入れ、かつ本を読めるのは俺ぐらいだ。
「そういう意味では気が利いているな。いや――」
本を用意した人物も同じ結論へ先にたどり着いたのだろう。子供向けの文字を勉強するための本が、本棚にしまわれたモノの中に混じっていた。対外的には幼女用の本と言うことなのだろうが、実際はおっぱいお化け用の本であると見てもいい筈だ。
「ただ、そうなってくると」
問題の本を使って二人に読み書きを教えるのは、俺の役目ということになる。いや、もともと教官なので誰かに教えることに抵抗がある訳ではない、ないのだが。
「授業で学生に教えて、帰ってきてもまた、か」
脳裏に浮かび上がったのは、サービス残業の文字。連れて来たのは俺なのである意味自業自得かもしれないとはいえ、思わずため息が漏れる。これらに加えて電化へ修行もつけなくてはならないのだから。
「だが、やり遂げればならん」
おっぱいお化け達の番から逃れるには殿下をあの二人のお眼鏡にかなうまで強くすることは必須だし、あの二人が文字を読めないことで何らかのトラブルが起きた場合、事態の収拾をしなくてはならなくなるのはおそらく俺なのだから。
「まぁ、それはそれとして」
まずは、入居の準備を手伝ってくれた面々をねぎらいお帰りいただかなくてはならないだろう。作業はほぼ終わっているが、ここで慢心して最後にやらかすというのはよくあるオチだ。
「さてと、あらかた片付きはしたようだな」
教え子達が作業を終えて部屋の外に集まってくるのを待って、俺は口を開いた。
「今日は助かった。改めて礼を言わせてもらう」
「いえ、教官、そんなことは」
「これぐらい大したことはありませんよ」
軽く頭を下げると、教え子達の口から言葉が漏れ、同時に何かの落ちる音がした。
「ん?」
頭を下げた弾みで俺が何か落としたのだろうか。そう考えて、ふと思い出す。確か服の中におっぱいお化けの下着を隠していなかっただろうかと。
「あれ、何か落ちた音が」
誰かの声で、俺の血の気が引いた。このタイミングで下着が落ちたとしたなら、最悪だ。俺は魔法で強化された身体能力を用いて急いで、かつ密かに音の方を確認し。
「あ、あの。これは違」
見えたのは一冊の本と誰かの足。聞いたのは弁解らしき声。本の表紙に描かれたタイトルが正しいなら、それは性教育の本のようであり。たぶんおっぱいお化け達に人の子供の作り方を教えるためのモノなのだろう、しかし。
「これは違うんです」
何が違うのかはさておき、俺は弁解する最強主人公ちゃんにツッコミたかった。お前が落とすんかい、と。
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