終章【それは黄泉へと至る】
気絶したユフィーリアを抱えて戻ってきたショウは、海賊船の客室を使わせてもらうことにした。一応、設備はきちんと整っているらしい。
「よう、少年。今日の功労者は寝てるかい?」
「帰れ」
「酷い言い草だ」
そんな時、ひょっこりと顔を覗かせてきた骸骨に、ショウは一瞥もくれることなく辛辣な台詞を吐く。基本的に、ユフィーリアの意識が及んでいない場合はこんな感じだ。
骸骨――キャプテン・テイラーはやれやれと肩を竦めると、
「そういや、少年。この前、深海までこなかったか?」
「?」
「ああ、いや。お前さんの関係者っぽいというか、なんというか」
テイラーは剥き出しの頭蓋骨を骨の指で掻くと、
「実はこの前、アングリードに二人の天魔憑きがやってきた。そいつらはこの船でワノクニまで行けねえかって言ってたんだが、行けないって言ったら帰って行ってな。その時のうちの一人が、お前さんにそっくりだったんだよ」
「そっくり? まあ、そのような人物もいるだろうが……」
ショウには親戚らしい存在はいない。思い出すことすらできない。
そんな似ている人物になど心当たりはなく、首を傾げるショウにテイラーは「ああ、違うな」と言う。
「そっくりってか、瓜二つだ。お前さんを老けさせたような、そんな雰囲気がある」
「――――」
自分の姿に瓜二つ。
そして、ワノクニ。
ショウは、それらの条件に合致する人物に心当たりがあった。
しかし、それを言葉にするより先に、テイラーが「まあ、戯言だ。忘れてくれ」なんて言って去ってしまった。
彼の話が本当であれば、おそらく一人だけだ。
「……父さん?」
思わず、ショウは呟いていた。
それは遥か昔、燃えゆく自宅に飛び込んで消えた父の姿だった。
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