6年3組

6年3組 01番 嵐野英子

 日記の課題をやめてから、気づくと2年の歳月が経っていた。やはり小学校低学年の児童に日記を書かせるのは難しく、低学年の担任となっていたこの数年間はすっかり日記とはご無沙汰だったのだ。


 しかし今、僕の目の前には何十枚と積まれた原稿用紙が置かれている。


 そう、今年僕が担任となったクラスは6年生の教室。つまり、いつもの課題を出すことが出来たということだ。


 久しぶりの感覚に、自然と高揚感が高まる。少し深呼吸をして、僕は1枚目の原稿へと意識を向けた。


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6年3組 01番 嵐野英子あらしのえいこ


 春休みに、わたしは遊園地に行ました。


≪行『き』ましただね≫


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 そうそう、こうやって毎回、添削のコメントを入れてたんだ。段々と思い出してきた。


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 仕事で忙しいお父さんも一緒に行たので、楽しかったです。また行きたいです!


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 あとは最後に、先生のコメントと称して一言を添えていたっけ。



【先生のひとこと】


次も一緒に行けると良いですね!


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「よし、こんな感じだったな」


 懐かしさに小さな感動さえ感じる。僕は次の日記を見るべく、原稿を一枚めくった。

 

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