机上の名刺

 空の隅に溜まり始める曇り空が視界に入る。向かいでは笠さんとジンくんが楽しげに話しながら作業を進めていた。

「週末は旦那と息子とで、弁当もって公園まで歩いてきたわ」

 と、言葉をさらりと投げかけている。

「いいですね」と丁寧な相打ちを打っていた。

「母さん父さん——もうじっちゃん、ばっちゃんかな。みんな連れて」

 業務中、私とカイさんがセットで動くことが多いように、笠さんの場合はジンくんがセットで対応するケースが多い。


「そういえば、先週やってきたおじさん。なんだったんだろうね」

 と、笠さんがなにげなく言った。

 机上に置いたままになっていた名刺をちらりと見る。

 株式会社博来。喜多島……さん。行動一つひとつに勢いがあって、驚いたな。

 脳裏に過ったのは、その人を見たときのカイさんの表情。いつもとはちょっと違うように思えてならなかった。

「カイさんの知り合いなんでしょうか」

「きっと、前職の関係先とかでしょ。あのヒトだって転職組だし」

 笠さんはそう言って珈琲を口にする。その後に「転職組じゃない人の方が少ないけど」と笑って付け加えた。

 タスクツールに新しいカードが追加される。記入者はカイさん。

 ミーティング。来客対応。——学校訪問。

 ……学校?

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