本能行動の構え

 ランニングウェアで公園内を歩く人たちの中で、私たちと同じようにスマートフォンを片手に散歩する男のヒト。明らかに見覚えのある男性ヒト

 見覚えのあるというか、カイさんよね、アレ……。少し遠巻きから、じっと眺めていた。向こうはまだ、こちらに気づいていないみたい。


 どうしよう。声かけていいものかしら。向こうが一人とは限らないし……。


「どうしたの、お姉ちゃん」

 い、いやッ、なんでも!

 妹は少し首をかしげながらも、スマートフォンに視線を戻す。


 この公園は、もともと近隣の人たちにとって定番のジョギングコース。お城の外濠そとぼりだった場所を中心に整備され、真ん中の大きな池を円の形で囲むように道がかれている。今から走り出すと言わんばかりの格好で外に出た私たちのように、この辺りでは、スポーツルックのランナーや運動部の集団が頻繁ひんぱんにトレーニングしている。


 それにしても。

 ランニングウェアが似合うな、カイさん。

「あのイケメンが気になってるワケ?」

 チ、チヒロサン。いきなり何を!


 その時だった。


 カイさんと目が合った。

 目が合ってしまった……。


 うぉ、風と共に駆け寄ってくる!

 無意識に、両足を広げ腰をかがめて身構えた。

「なにその構え……」

 パワーがるのよ。あのヒトの相手。

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