転換点

 カイさんが、アルトの二人に《クライフ》を一通り語り終え、端末を閉じようとしていた。

「続きはまた今度」

 二人はカイさんにお礼を言い、改めて日取りを確認してからオフィスを後にする。

「ジンくん、またね!」

「彼女とうまくいってる?」

 はいはい。あんまりジンくんで遊ばないでください。

「お、おつかれさま……です」

 でも、こっちはこっちで露骨にカオ赤くしちゃうんだものなァ。目が泳いでるし。からかいたくなる気持ちはわかる……。


 それにしても、相変わらず楽しい人たちですね。

「ああいう人たちが寄ってくるってことは、ヴァイスぼくらがチェックされ始めたってことさ。前向きに考えよう」

 そう言われると、なんだか面映おもはゆいです。

「ただ、気をつけないとね」

 気をつける?

「こういう時って、決して好い話だけが——」

 その時だった。

 自動ドアが開き、身振り手振りが大仰おおぎょうな男性がこちらに寄ってくる。

「お、いたいた! 多久美君!」

 ……多久美って、カイさんよね。珍しい。

「だいぶご無沙汰じゃないか!」

 当の彼は、歩み寄るスーツの男性に呆気に取られていた。

「喜多島部長……」

 そのひとを呼ぶカイさんの口調と表情は、どこが苦々しい。

「いかにも。あ、君はスタッフ? はい名刺」

 あ、どうも。

 え、誰?

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