鯉と竜

 桔川きっかわさんが、私とカイさんに尋ねる。

「この《クライフ》のすごさはわかりました。世界規模でお互いに異なる母国語を使いながら対話しあえるのは便利です。でも」

 でも?

「なぜソレがゲームで、しかも産業発展のハブなんて話になるんです?」

 彼女の問いに、カイさんが軽やかに微笑ほほえむ。

「そこは、また今度ね。今は《クライフ》が、ゲームを舞台にして色々な人の役に立てるプラットフォームだってことだけでも理解してもらえたら大丈夫」

「プラットフォーム……」

 そう。《クライフ》は、eスポーツという新たな時勢と相乗し、新しいプラットフォームとして注目されている。検索エンジンから始まったあの巨大企業や、私も常用しているECサービスサイトにはまだまだ遠く及ばない規模だけど。

「あれくらい発展できたら、すごいな」

「今は遥か雲の上ですけどね」

こいだってさ、滝を昇って竜になるんだよね」

 鯉、ですか?

「もし竜になれたら、空だって飛べるかな。そしたら、いつかは雲に届くかもよ?」

 そして、私に笑いかけてくれる。

 いきなり何を言い出すのかと思ったけれど。

 

 ——まぶしいなァ。


「飛べるなら、飛びたいですね」

「だよねー」

 私ですらそう思えるようになったのは、カイさんのおかげなんだけど。

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