桔川さんの視点

 桔川きっかわさんが、モニタをじっくり眺めたまま「あっ」と声を漏らす。妙に色っぽい「あっ」ですね。

 カイさんは横目に彼女を捉え、マウスの操作を止めた。

「何かに気づいた?」

「何か、ってほどではないんですが——」

 画面の端の方を指さす。とあるコミュニティでのコメントが映っている。

「このプロゲーマーに興味あるの?」

「いえ」

 と、瞬時しゅんじに返事をする。即答そくとうですか。

「ゲーマーの方って、みなさん日本語お上手なんですね」

 えっ。

国籍こくせき多彩たさいなのに、みんな日本語で……。ゲーマーの方は日本語を学ばれるんですか」

 その時、カイさんがニコっと笑う。

 つられて、私と笠さんとジンくんも表情もニッとほころばせる。


 そうきたか、と思った。


 そんな風潮ふうちょうがあるかはともかくとして、

「皆さん、母国語ぼこくごしゃべってるよ」

「えっ。じゃあ現地の日本人ですか」

 すごいな。頭の回転が早い。

 ただ、そういうことではなく……。

「このサイト上の言葉は全部、自動翻訳じどうほんやくされるんだ」

 カイさんはいかにも嬉しそうな表情で語りだす。

「《クライフ》をかいすることで、そこで行われる交流コミュニケーションはすべて自分の望む言語に翻訳ほんやくされる。それが《クライフ》のうたう『あなたと世界が交差する』のキモだ」

 そして、私たちCS班の頼れる商売道具なのです。

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