帰りはまっすぐに

 アルトの石間いしまさんたちを見送り、道端みちばたにカイさんとジンくんと私の三人がつらなる。

 街中はすっかり週末の夜の喧騒に包まれていた。車道ですれ違うバスやタクシー。歩道を渡る人々の声。雑踏を踏み歩く音の重なり。この賑わいも、もうしばらくは尽きそうにない。

「ジンくんはこの後どうする?」

「このまま平尾ひらおの自宅に帰ります」

 そっか。平尾だと、ここからちょっと遠いね。

「ですが、バスと少しの歩きで——」

 すると、カイさんがすっと一枚のチケットを差し出す。

「はい、タクシーチケット。今日はちゃんと勤務きんむ扱いにしていいから、週明けに申請しんせいよろしく」

 ジンくんが顔を嬉しそうにほころばせた。

 ——このヒトは、さらりとこういうことをする。

「ありがとうございます! では、お先に失礼します。お二人はこの後もごゆっくり!」

「お疲れさま、ジンくん。すのちゃんとふたりでか。それも楽しいね」

 ちょ、ちょっとジンくん! 絶妙ぜつみょうに空気読まないで!

 私の意をんだのか、ジンくんは一瞬だけ妙に穏やかな笑みを見せてきびすを返した。タクシーが止まり、ジンくんがこちらに手を振ってから乗り込む。そのままタクシーチケットをにぎって運転手さんに行き先をげた。


「ポケセンのある博多はかた駅まで」


 まっすぐ家に帰れよ。

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