収穫は

 タブレットを囲んで盛り上がる私たち。すっかり意識がそちらに向いており、ダイニングバーの騒がしさも気にならなくなってきた。

 ジンくんたちの様子が映し出されている間も、性別や年齢といった顧客属性こきゃくぞくせいや客の動きを纏める顧客動線こきゃくどうせん店舗前てんぽまえの人の動きから読み取る潜在顧客調査など、様々な分析結果ぶんせきけっかが表示される。

「店舗内全域をカバーしながら同時に分析するんですね」

 人力でこの精度を求めたら、どれだけのコストがかかるのだろう。

 桔川きっかわさんが、垂れた前髪を横に流して髪型を戻しつつ、「理論上は機器一つで半径百mメートルはいけますよ」とアンダーフレームの眼鏡を光らせていた。——色白の長い黒髪で、服装はシンプルな白シャツなのに、妙な色気があるな、このヒト。

 突然ジンくんが周囲を見渡しだす。

「あ、これは——」

 石間さんと桔川さんがジンくんの方に視線を送った。つられて私もジンくんの方を見ると——あ、目が合った。

 彼が早足でこちらに歩き寄ってくる。

 どうしよう。なんて言おうか。実証実験とは言え、監視してましたとは言いづらいし……。

「おつかれさまです」

 怒っているのかなァ。

 そこにカイさんが一言。

「収穫はあったかい?」

「……今度、デートに行くことになりました」

 ……よかったね!

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