水を得たカイさん笠さん

 誰かが共用部の窓を開けたのか。自動ドアが開くと同時に風がそよいでくる。風を引き連れてカイさんが戻ってきた。

「ジンくん。アルトさんのところの女子と飲みにいくんだって?」

 もうカイさんの耳には入っていたらしい。

「どこで知ったんですか——」

 ため息をついて、いぶかしむジンくん。

「当の本人たちから」

「早耳な……」

 あきれるジンくんの横で、今度は笠さんが作業の手を止めずに横槍よこやりを入れた。

「私はソレ知らなかったなー」

「笠さんにはイマ言いましたからね」

「そんな唐突とうとつな出会い、私は決裁けっさいしてないわよ」

「笠さんがなんの決裁をすんですか」

「業務上のメイトとして、出逢であいを兼ねたみには笠さん稟議りんぎが必要じゃなァい?」

「そんな謎稟議なぞりんぎないから」

 手で振り払うような仕草。二人ともクール寄りのキャラなのに、ホント見ていて飽きないなァ。


 すると、カイさんが晴れやかなカオでてのひらをポンと叩く。

 何か発案したらしい。

「だったら、僕たちも週末飲み会をしようよ」

 え、そのタイミングで⁉

「場所はジンくんとお相手さんの隣の席を確保しようね!」

 ジンくんがお茶を噴き出した。

 カイさん。それ野暮やぼ無粋ぶすいきわみですけど。

「無論、ジョークです」とカイさん。

 ……でも、このヒトならやりかないわね。

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