いつだってはじまりの日

 実家でこともなく寝転がっていた私の枕元で、無機質なコールが鳴る。また、カイさん。

スノちゃん? 昨日はどうも。どうにか出勤せずにいけそうです』

 私も一通り見ていましたが、問題なさそうですね。

『でもIDがなかったら万が一の時動きづらかったからね。助かったよ』

 すみません。私もご迷惑をおかけして。

 すると、カイさんは電話の向こうで、

『今回は痛み分けってことで』

 と、言いながら笑っていた。


『またよろしく』

 いや、お互い忘れないようにしましょう。


『じゃあ、これからもよろしく』

 ——んんッ! どういう意味ですか⁉

 顔が一気にボッと赤くなり、ベッドから跳ね起きる。

 向こうにそれが伝わったのか、軽く噴き出されて『またね』と電話を切られた。


 うわ。ちょろいな、私。


 それをカナに話すと、『アンタちょろすぎ』と笑われた。

 ——ち、ちょろくていいし!

 そう弾けるように答えたら、また笑われた。



 またね、か。

 網戸越しに風が吹き入り、カーテンが靡いている。

 昨日までと今日から。何が違うのかと問われれば、雲を掴むような話かもしれない。それでも節目が一つあれば、それを契機にまたこれからと、私たちは一新してがんばれる気がしてくる。


 今日をはじまりの日にして、また明日を迎えよう。

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