釈然としない

 雑多ざった整頓せいとん狭間はざまを行き来するこのオフィスのなかでも、ガラス張りのそばでソファに腰掛けられる窓際の空間が私のお気に入り。視線を後ろにやると、仕事とは思えないくらい楽しげにミーティングをするカイさんがいた。


 先日、某テックエキスポでカイさんと出会った担当者さんが言うには……。


『プランのご説明やシステムの解説もすごく親身でわかりやすくて……。生産性向上の参考にとアナログな業界から視察で来た身としては、一番参考になりました!』


 それはなによりです。

 なお、同一人物であるはずの後ろの席のヒトは。


「それはアレですよ! アレをアレしてああやっちゃってください!」


 ……指示語しかねぇ。


 その方がさらに言うには、

『きっと、仕事に対していつも真摯しんしで、熱心なんだろうなって評判です』


 それは素敵ですね。

 なお。


「え、全部明日だよ。明日の僕が頑張ります、きっと」


 ……通常運行ね。


 もっと仰るところでは、

『すっかり社長も感心してらっしゃって、次に相談するならそのカイさんだなって……』


「名刺、かさばるよね。顔も出てこないし。年イチの顔浮かばない名刺シュレッドタイムです」


 ………………。

 カイさんがこちらに気づいた。

「どうしたの、スノちゃん」


 ——なんか釈然しゃくぜんとしない。

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