今まで踏み込めなかった話

 を捕まえようと必死な私とカイさんのとなりで、

「思い出のゲームってワケですね」

 と、チヒロが感想を漏らす。珍しく、ふわりと柔らかい表情を浮かべていた。

「——っと、色違い発見!」

 そう思ったのもつかの間、妹は脇道の方へ軽快な足取りで向かっていく。


 カイさんがつぶやいた。

「思い出でもあるし、新しくもある、かな」

「言いえて妙ですね。カイさん」

 この『GO』は、リリースされてからまたたく間に世界中で人気を博した。プレイヤーの人口も世代の幅広さもすさまじいほど。

 私にしてみても、かつて旅したなかで出会ったモンスターたちが私たちの世界にやってきたみたいで、胸にジワリと熱が宿るような感動を抱いたのを、覚えてる。


「じゃあ、カイさんって——」

 妹が戻ってきた。

「もしかして三十歳くらいですか。全然見えないです」

 ね、年齢の話⁉

「ありがとう。今年で三十二かな」

 あ、私のひとつ上か……。

「でも、職業柄、子ども心はずっと持っていたいね」

「ソレ、私も見習いたいです」

 チヒロは、少しふやけた表情でカイさんに視線を送っていた。

「だったら、お姉さんを見習うといいよ。若く可愛く楽しく、だから」

 かッ、かわいく⁉

「姉はむしろ大人になりきれない路線な気がして」

 バッサリ言いすぎだろ。

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