カイさんと人の名前

ひと息つこう

 私の隣の席で、カイさんがひと息ついた。

「カイさん。珈琲コーヒー、お好きでしたよね」

 ペットボトルの水を口に含んだままうなずく。

「インスタントですが、ウチの近所で豆を焙煎ばいせんしている珈琲ショップで頂いたものがあるんです。一緒にれてきますね」

 午前中の慌ただしさのなかで、カイさんの表情がいっそう賑やかで晴れやかになった。


 袋を開けて珈琲を淹れながら、ふと思う。

 ——私が今の会社に転職して、しばらく経った。少しは馴染めたのかな。


 この会社に訪れてまず驚いたのは、社内の開放感ある空間そのものだった。一般的なオフィスからかけ離れた、カフェスペースのような多目的レイアウト。私やカイさんたちが使う席も、カフェテーブルにありがちな机をいくつかくっつけただけ。

「どうぞ。カイさん」

「ありがとう、スノちゃん。香りからして期待できるね……!」

 笠さんも、よかったら。

「おっ、気が利くね。さすがチヅちゃんだわ」

 軽く笑ってみせてから、なにげなく外を見る。壁は一面ガラス窓で、外に開かれた雰囲気は私のお気に入りだった。

 カイさんが私の視線を追って言う。


い天気だねぇ。おうちに帰りたいくらい」


 リーダーがそんなこと言わないでくださいよ。私も帰りたくなるでしょ。

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