ふぬけたカオして

 向かい席のカナが、グラスビールをグッと飲み干した。グラスがテーブルにトンと置かれ、内側についた白い泡が、私には真白ましろに見える。ほろ酔いながら、それが妙に面白かった。


「次は宅飲みね」

 それ夜が明けるでしょ。金曜にして。

「出た。最近のアンタ、すぐ仕事に振れちゃうわね」

 悪かったわね。ネタの幅がせまくて。

 ——と言いつつ、白ワインを一口。

「その、カイさんの話」

 うん。もしかして、この話、迷惑?

「全然。ちょい前のオタクトークオンリーよりずっと共感できるし」

 火の玉ド直球ストレートやめて。

「今もやってるの?」

 だって趣味だもん。


 今ここで、こうしてほろ酔いで話すだけ。それでも、妙に安らぐ自分がいた。


 行きれたお店で、肩の力を抜いて楽しく話す。

 ——たぶん今の私、すごくふぬけた表情カオしてる。

ってるだけよ」

 そうとも言うわね。

「でもさ、チヅ」

 なに?

「なんか、最近のアンタ——」

 どこかヘン?  だとしたら、それはきっとカイさんのせいよ。

 するとカナが、少しふしぎなことを言った。


愚痴ぐちを言わなくなったわね。ちょっと、明るくなったわよ」


 ——ふへへ。

「そのカオ、キモい」

 やかましい。

「ふやけた笑顔しちゃってさ」

 うん、そうね。


 それもきっと、カイさんのせい、かな。

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