カイさんの影響

結局、馴染んじゃった

 今更ながら、カイさんに尋ねてみた。

「カイさんって、ウチのチームのリーダーですよね?」

「一応ねー。ただ、上司と部下みたいな感覚はないなァ」

 カイさんはそう言うけど、一応、彼にも対外的な役職はある。


 でも、そうなんだよね。不思議なことに。


 この職場は、プロジェクトごとに職掌しょくしょうを明確に括ろうとするし、私たちも担当ごとに持つ機能で考えるから、スタッフ間の上下意識は比較的薄いと思う。誰もがみんな、自分にできる部分とできない部分を持っていて、それを補いあっているから、上下よりも横のつながりを意識してる。少なくとも、現場では。


 だから、いそがしいは、いそがしい。

 でも私は、ここの忙しさの中に、前職ぜんしょくまでにはあった『殺伐さつばつさ』や『められてる感触』を感じたことがなかった。


 ——そんなことを考えているうちに、定時がくる。

 なかば無意識に端末を閉じた。眼前のモニタは、暗い半透明の表面に、うっすらと私の輪郭りんかくを映している。


「ところで、スノちゃん」

 どうしました?

「昨日渡した、ゲッキョクの処理はOK?」

 またゲッキョクって言ってる。月極つきぎめでしょ。

「ゲッキョク」

月極つきぎめ

 カイさんがはにかんだ。


「もうゲッキョクの方で馴染んじゃったよ」


 つられて私もくすりと笑う。

 ——まァ、いいか。

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます