扉の前で

 カイさんとふたりでランチを済ませ、その道でオフィスに戻る。晴天の下で風と往来の賑わいを感じながら、大通りの信号を渡った。

「すみません。さっきはごちそうさまでした」

「ぜんぜーん。お気になさらず」

 ビルの自動ドアをくぐってエントランスのひやりとした空気に触れる。ふたりでエレベーターをのんびりと待っていた。そんな昼休み。


 三階で降りると、フロアからもお昼休みの緩やかな雰囲気が伝ってきた。外から戻ってきた人は、出入口備え付けのリーダーにカードをかざして颯爽さっそうと入室していく。私も、カードカード……。

「よっ、ご両人。おつかれサマ」

 あ、笠さん!

「お昼は食べてきたの?」

 カイさんがにっこりしながら「スノちゃんと一緒にね」と答える。

「この辺は食べるトコに困らないからねー。前とは大違い」

 少し前?

「ああ、三年前くらいかな。その名残なごりもあって、私は今も机でお弁当。旦那の弁当の余りだケドね」

 ニシシと笠さん。横をみると、カイさんがドアの前でなにやらもぞもぞしていた。

「何してんの、不審者」

「いや、まァ」

 どうしたんですか。

 少し間を置いてカイさんは、

「……僕のカード、中に置きっぱ」

 とだけ。


 そのパスケースは私物オンリーですか!

 とりあえず、私が開けますから!

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