#125:聖戦な(あるいは、ダメポカリプス)

「続いてはっ!! 取ってつけた感満載だけど、回りに回ってありじゃない? 新ジャンル、オラオラ系執事、訳してオゥル・バラァー、シバ=ンシ副議長だ、皆の者、敬礼っ!!」


 桜田さんの発音がネイティブ寄りで良かったと思う瞬間だった。二人目は、ムラなく染まった白っぽい金髪を無造作に立ち上げ、同じくムラの無い日焼け顔。好戦的な目つきと口許から傲岸不遜さが滲み出している。端的に言うとガラ悪だ。


 タメイドと同じく典型的とも言える執事姿だけど、まあ違和感を感じ得ない。首元を大きく開けて、赤いループタイをだらしなく下げている。


 「副議長」って肩書き付いてたけど、この三十前後と思われるお方がそんな結構上の地位であるのなら、元老院ってやはり若い組織なのだろうか。そして相手は、元老院は、僕らの「メイド」に対抗して「執事」をぶつけて来たのだろうということは容易に想像できるわけで……しかもルックスいいのを揃えて。


 完全に女性の観客の注目はそっちに行ってしまってるよ。野郎……っ!! はらわた温度の急上昇を感じる僕だったが、次の瞬間、とどめとも思える今日一の衝撃を喰らうこととなる。


「最後に控えしはっ!! 何と何との再・登・場!! イケメン面子の員数合わせ? いやいや元老院である伏線は張っていた!! 再生数5桁の再生怪人っ!! ミスターチャラ男、ヤブ=シくんっ!!」


 両手を軽く掲げて指をひらひらさせながら軽薄そうに登場してきたのは、正に何と何との、あのチャラ男だった!! こいつも元老院?


 ―ふわーww かわいい顔しておっかねww 楽しくいこうっつーの。オレ矢伏いいまーす。キミの名は? なんつって。終わったら連絡先教えてーww ってか、俺ら勝ち進んじゃうから優勝するまで待ってて欲しいかもww………………


 瞬間、僕の頭に予選の時のこいつの言葉が蘇る。いや、蘇るというか、たった今入ってきた情報というか、記憶の改竄というか、いやいやしっかりしろっ!! 今はそんなことに構っている場合じゃないはずだっ!!


 チャラ男こと「ヤブ=シ」と紹介された茶髪ロンゲも執事然とした格好は他二人と同じで、その首元には緑色に光るチョーカーを着けている。色分けまで僕らに合わせてきたか……そして運営、一回負けた奴でも平気で再出して来るとは……抗議しても無駄だろうからしないけど。


「……」


 壇上の「正面」に当たるところ(ホームベース側だ)で僕らは対峙する。目から体液がビーム状に発射されそうになるくらいにガン付けする我らメイド三人衆だが、対する執事達は皆一様に緩く、そして爽やかな笑顔を周りに振りまいている。


「さあっ、今回の驚天驚愕対局形式はっ!! これだゴアヘッ!!」


 桜田さんがバックスタンドの巨大ビジョンを指し示す。重低音のBGMが鳴り止み、そこに映し出されたのは、


 <限DEPジャンケン>


 「限DEP」と聞いて……すぐある予感が走った……この勝負、運否天賦でも無ければこちらに有利な要素は1ミリもない……おそらくは……また公然たるイカサマ・えこひいきが乱れ飛ぶ展開……勝つためにはそれすらも超えなければならないということっ……!!


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