#118:振幅な(あるいは、サインはV・C・V)
「お、お前のせいだろぉっ!! 中断したくても出来ないんだよっ、ノーゲームになったら、それこそ勝ちが無くなる……」
カオちゃんはもうキャラどころじゃない。目はつり上がり、切迫した真っ赤顔で僕にそう叫ぶようにそう言った。え? 僕のせい? どういうこと?
「お前の声が……何かわからないけどぉ、響くんだよっ!! お、おなかに……」
<チマチ=カオ:12,309点>
え? 予想外の発言に思考が停止しかける僕。……声?
【おなかって……え?】
思わず聞き返してしまう僕だが、その声に反応するかのようにまた三人娘とセイナちゃんが揃ってうつむき何かにこらえるような仕草をする。
「だからっ!! 声出さないでぇっ!! じんじん来るのぉっ、か、下腹部にぃ!!」
<メゴ=マコ:23,290点>
ええ? 声? このハスキーボイスが? ただの、低音のいい声ですよ?
【こ、声? え? ……か、下腹……えええええ?】
「も、もぉぉぉっ……喋らないでぇぇ……ほんともう……らめなのぉぉぉっ!! 子宮が揺さぶられりゅのぉぉぉぉっ!!」
<リポ=ッニ:27,888点>
えええ? 僕の頭の中は完全に真っ白に染まる。
<ムロト:0点>
第6手目終了。僕はついに3UPまで上げられた。渾身の力を手に込め脚を踏ん張れば、滑り落ちるのはあと少しくらいは免れそうな感じだ。対する他の3人は0とか1みたいだけど、いや、え? そんなことよりどういうことだ?
冷静になれ。クールに考えろ。つまりは……そういうことか。
僕はぐるぐる回る思考の中で、ようやくひとつの答えを見出すのだった。
【……よかった、病気のウイルスは……いないんだ】
僕が騙されていただけだったなんて。何だ。でも誰も傷つかなくて……本当に良かった。
「……着手以外で喋るのやめさせてぇっ!!」
「てめえっ、調子こいてんじゃねぇぞぉぉぉっ!!」
「は、反則を取りますよっ!! これより着手時の他に言葉を発したら!! 即1UPさせますから!!」
キャラを忘れ、顔が上気しまくりのセイナちゃんが、内股になって膝を震わせながらもそう気丈に告げてくる。はいはい、わかりましたよ。いま……楽にさせてあげますからね。
……のちにジョリーさんが語ったところによると、この時の僕の顔は正視に耐えない、にちゃあ、と音が聞こえそうなほどの粘着質な、それでいて何か悟りを開いたような、世にも不気味な笑顔だったという。
「第7手目……始めますっ……って、あ!!」
顔中に玉の汗を浮かび上がらせたセイナちゃんが必死の形相で進行を続けるが、そう、運営の方へ指示がまだ行ってないんじゃないか? ……「僕を親にし続ける」という指示を、「やめさせる」という指示が。
<親番:ムロト>
ルーレットはやはり、僕を指した。そして瞬間、目を見開いた三人娘とセイナちゃんの顔から血の気が一気に引いたのが見て取れた。
ははははは、さあ、宴の始まりだよ。僕らをさんざ見下してくれた元老院のみんな、ここから……ここからはっ!! 僕のターンだっ!!
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