#109:電撃な(あるいは、五月蝿い彼奴ら)

「それじゃあー、さっそくぅー、1手目始めるよっ!! お〜や〜は、だ〜れ〜だ〜あ〜?」


 実況少女セイナちゃんがスタンド側を示すと、巨大なディスプレイには三角形が互い違いに重なったいわゆる六芒星と、その頂点を結ぶ正円が図示されていて、その頂点それぞれに僕らの名前が付されていた。


 三角形がチームを示し、その頂点が各々の位置および着手順を示しているわけだ。そして今まさに、その六芒星が勢いよく時計回りに回転し始めたわけで。これが抽選ってことか……うーん細工できまくりだね。


「いちばん下で止まった人が『親』になるよっ!!」


 セイナちゃんの説明の間に、六芒星の回転は徐々に速度を落とすと、じりじりと間をもたせるような動きに変わる。親番を示す一番下を誰、と見える速さで通過していく対局者の名前。


 僕、リポちゃん、アオナギ……で止まるかと思えたが、不自然なほどの慣性の力が働き、滑るようにして次の頂点に移動した。親:メゴちゃん。オッケーオッケー、逆に安心するわ。このくらいやってこないとね。張り合いないよね。僕は強がり以外の何ものでもない考えで、いやな予感を振り払う。


「親番、メゴ=マコ選手!! お題をお願いしますっ!!」


 僕の真正面、メゴちゃんはアヒル口に立てた人差し指を当て、上空を見やってかわいらしい(そしてわざとらしい)考え中のポーズだ。もう決まっているんだろう? そんな小芝居いらないぞっ!! っと何とか僕は自分を鼓舞するしか出来ない。来るっ……!!


「んーと、じゃあ、まずはかるーく『恋愛でダメだった話』にしまーす、略して『恋ダば』」


 様子見か? 略し方はともかくオーソドックスなお題だ。あいにく僕には切る札がそれだけでデッキを構築できるくらいあるぞっ!!


「持ち時間は各自2分!! 手番の時に沈黙が20秒続いたら次の人に順番が移りますから注意! そしてパスする時はパスと、はっきり伝えるか、左手の手の平をこちらに向けてくださいね!! あとは〜今まで通り、『嘘をついた』と判断したら、身につけてもらった装置からお仕置き電流が流されますので〜ご注意を!! だっちゃ!!」


 恒例の直前細則を告げ、セイナちゃんがさらに禁断の語尾を後付けしてくるが、対局に集中だ。まずはアオナギから。どう出る? 僕の斜め右に位置する長髪の蒼メイドはゆっくりとした所作で正面を見据えた。そして、


「……『こわいよ……女が僕に働けと言うよ……』」


 それ!? これまた様子見なのか? 相変わらずの難解DEPを撃ちはなったアオナギ。その評点は、


 <アオナギ:5,202点>


 う、うーん微妙。これチーム二番手の僕はどう対応したらいいのやら。と逡巡するが、


「パスで」


 え!? 子2のリポちゃんは大して悩むようなこともなく、いきなりパスを告げた。何でだ? 決して高いとは言えないアオナギの評点……上回るのってそんなに難しくないと思うけど。何か向こうのチームには作戦でもあるのか? 考えている余裕はない。次は僕の手番だ、どうする?


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