#107:滅裂な(あるいは、読み飛ばしOKよ)

 脳をフル回転させ、この対局ルールの戦い方をシミュレートしてみる。


「……」


 まず重要なのは「親」だ。お題を決められるというのも大きなアドバンテージである上、手番がいちばん最後というのも大きい。前の5人の評点を見て、行くか降りるかを決めることが出来るんだ。行けそうだったら行き、高い評点が出たらパスという選択肢もある。


 それに味方がその時点でトップの場合は、パスないしわざと評点低めのDEPを撃ってアシストなんてことも出来るんじゃないか? そんな重要な親番だが、抽選で選ばれるとさっきセイナちゃんが言っていた。抽選……そこに何らかの作為はあると思っていい。でも、三連続元老院側とか、そこまで露骨なことは出来ないんじゃないかと、勝手に推測してみる。オーディエンスがいるんだ、公平さが失われたら……何かしらの反発はあるだろう。と信じたい。


「……」


 次に子の場合の戦い方だ。DEPを撃つ順番で「子1」から「子5」までと便宜上呼ぶことにすると、子1がいちばん難しい立場だ。唯一優位と思える点は、お題に対して最初にDEP撃ちが出来ることのみで、つまり初っ端だから評点者に対してインパクトがあるし、前の人とかぶる心配をしなくてもいいこと。反面のデメリットは、ノーガードになってしまうということだ。DEPを撃ったとして、それを上回る評点を子2以降に出されてしまったら負け確定だし、場が読めない内にパスはしずらいということ。これは結構きついな。


 子2と子3は中盤。だけど、子2は親チームの一番手、子3は全員子チームの二番手。子2は親がどうしたいのか?そういったことを推し量る必要があるし、子3はおそらくDEP撃ちをしたであろう子1の評価および子2の動向をもって対応する必要がある。評点が「子1<子2」であった場合は問答無用で高い評点を狙ってDEPを撃つという選択肢しかおそらくないだろうが、「子1>子2」であった場合は、低いDEPを撃って子1に託すか、思い切って勝負に出ることも出来る。


 子4と子5は……? 子4はその時点で子2が最高評点を叩き出していた場合、パスする選択肢が賢明と思われる。子2がそのままウィナーになれば相手3人全員にダメージを与えることが出来るし、子5に逆転された場合でも自分は上げられることがない。さらに自分チームの最後の手番の「親」が再逆転すればそれはそれでOKなわけだ。


 じゃあ逆に、相手チームの子1もしくは子3が最高評点者だったら……? これは勝負に出る選択肢しかないんじゃないか? と思われる。パスしてしまうと子2は確実に上げられるし、「親」は必ず勝負にいかなければならなくなるからね。子5も考えてみると難しい。手番が来た時点で自チームが勝っていた場合でも、必ずしもパスが最良というわけでもなく、最後に控える「親」がすごいのを撃ってくると判断したら行く選択肢もあるだろうし、相手チームが勝っていたら有無を言わさず勝負するしか無い。


 ぐうう、何か複雑だ。これ頭に入れて立ち回れるのか? チーム間の意思疎通はお互い20mは離れているから声では無理あるだろう。身振り手振りのサインか? しかし、もう全員「スライド」の上だ。今から何かを打ち合わせる暇はないわけで。でも相手チームはやってくるだろうけどねー、このルール熟知してるだろうし。くっ、不安だ。


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