森に住む者9



「キシャアァアア」



 二足歩行で歩いて来た鎧トカゲを一刀両断した、やみくもに振り回した剣がたまたま首元にジャストミートしたのだ。

 首が無くなった体はその場に倒れる。


 それを見て回りの魔物達は一瞬動きが止まった。



「「ギャシャーァア!」」



 一斉に聞こえ雄叫び、トカゲ達の早さは倍になった。



「くっ、来るなら来やがれ!」



 俺は再度剣を左右に降り続ける、なんとか魔物から一定距離を保てているが、それも時間の問題だろう。



「イヤッ、クソッ」



 僅かに聞こえた声に目を向ける、さすがにこの魔物の量、自分を守るので精一杯だ。衝撃で吐血していたカロンに、羽の悪魔と鎧トカゲが群がっていた。



「……殺せ、早く殺せ! このケダモノ!」



 よく考えてみれば俺はこいつらを助ける義理はない。ただ、勝手に婿呼ばわりされて、知らない間に童貞うばわれて……


(まあ、それはべつにいいか)


 こいつには石にしようとされたのだから。挙げ句の果てに姉のアルメリーは浮気しようものなら殺すって、メンヘラもいいところだ。





 だけど……





「本当、無茶苦茶だ、お前ら!」





 やけくそだ、何十匹もの魔物に囲まれているカロンに駆け寄り剣を振り回した、何匹かの背中を斬って、鎧トカゲ達を仕留めた。


 散るようにいなくなった魔物、最後に退けたのは金色の鎧トカゲだった。ゆっくりと距離を取る、この群れのリーダー的存在だと思わせる風貌だ。



 その中からぐったりとしたカロンの姿が現れた。その姿を見て彼女に何が起こったのかが、すぐに分かった。

 下乳の覗く衣服はめくり上げられ、大きな胸が土埃に汚れている。下半身のホットパンツは破られ、下着も半分にちぎられ、腰に掛かっているだけだった。爪で引っかかれたのだろう、血の滲んだ後が全身にある。彼女の両足は大きく開かれ、ドロリとした体液が大量に溢れ出し、尻の下がぐっしょりと濡れている。




「カ、カロン……大丈夫、か?」



 大丈夫かどうかは見れば分かることだ、でもこの言葉しか出てこない。




「だ、大丈夫……こんなことくらい」




 なぜだか、どこからか沸き上がる怒り――――



 これ以上魔物達を好きにさせたくなかった。俺は怒りに任せて剣を振った。


 しかしそれは魔物を近づけようとしないだけに振り回す剣、狙って斬るわけではない。常に振り続けていると息が上がり、その動きはやがて止まる。

 汗が止まらない、呼吸が追い付かない。こんなことは中学生の時に授業で長距離マラソンをいきなりやらされた時以来だ。



「それよりキミだけ……なんで、キミだけ逃げないの? エルフは皆逃げたのに、それに私達……キミを、殺そうと、したのよ」


「そ、それでも……それでも女の子が、目の前で……可愛い女の子が酷い目にあって殺されそうになってたら、助けるものなんだよ、男ってのは!」


「……格好つけて、弱いくせに……死ぬよ」


「いいよ! 何もしなくて死ぬよりかましだ、そのまま逃げてたら一生後悔するしな」



 ニヤニヤと笑みを浮かべながら銀色の鎧トカゲの中から俺に近づく金の鎧トカゲ、涙目のカロンがこれでもかというほど大きな胸を露に、体の中に出された体液が時折、卑猥な音を出して逆流していた。空には羽の悪魔が飛んでいる、後ろには巨大なトロルが、アルメリーの衣服を少しずつ破りながら遊んでいた。



「バカ……」


「ああ、俺はバカだよ、自分が一番分かってる」



 歩み寄る金色の鎧トカゲを威嚇するように、残る力を振り絞り、両手で剣を持ち振り上げる。

 一生に一度くらいは格好つけたい、まさかどこかのアニメで聞いたことのあるような台詞言ってしまうとは思ってもみなかった。これがファンタジーの効果というものか、まっすぐ前を向いたまま、笑ってみせた。



「嬉し……」


「はっ、サンキュー」




 もう一度カロンを見ると、頬を赤くしていた。



「嬉しいけどさ、キミ言葉と体が合ってないよ、その下半身……」


「えっ?」



 カロンのたわわな胸のせいだ――――



「いっ、こ、これは生理現象というか」


「まったくこんな時に、キミは……」



 呆れているように声を吐くカロン



「そ、そっちがそんな格好だからだろ」


「わ、私は犯さ……まぁいいわ、早く元に戻しなよ、助けるヒーローがそんなとこ起たせてたらカッコ悪いから」


「お、おう」


「こんな格好で言うのもなんだけど、もし助かったら、姉様と二人でしてあげるから、ね」



 股間に視線を感じる。それは気のせいなのか、そうで無いのか――――




 二人で……




 カロンのいう『二人』とは、つまりアルメリーと三人でコトを行うということだ、その言葉の意味にはアルメリーも助けろよ、と、いうことも含まれているのだが、それよりも先に想像が沸き立つ、直しようがない……



「早く、直しなさいよ……」


「やっぱ、無理――――」




 自分の股間を見てそう言った瞬間、俺の剣は金色の鎧トカゲによって弾き飛ばされた。



「あっ」



 空中高く飛ばされた剣を、俺は目で追った。気がつけば目の前に金色の鎧トカゲが立っている。




 終わった……




 俺もこいつらと同じように下半身をおっ起てて、単細胞の魔物と一緒だな……


 一気に萎える下半身。



「バカ……」



 カロンの声が静かに響いた――――




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