森に住む者4



「ほら、皆が見てる中で服を脱いでみろ! ほら、早くしろ!」



 我ながら最低の変態っぷりだ、マリジューレが聞くと即刻首に刃先を突き付けられるだろう。

 両手を胸の前に持ってきて顔を伏せるアルメリー。



「は、や、く、し、ろ!」



 肩をすくめて小さくなるアルメリー、ただでさえ華奢な体型が更に小さくなる。


 やはり大きな声を出せばすぐにビビっている、姫とはいえまだまだ子供、背伸びしようとしている子供なのだ。

 とどめに服を引っ張ってやろうと手を伸ばした、





 ――――あれ?







「どうしたのですか?」



 空が見える、アルメリーにしゃがみこみ覗き込まれている。

 どうしたのかはこちらが聞きたいくらいだ、耳が遠くなる、体が動かない、まぶたが重い……



「ふふ、もう酔われたのですか?」


「酔った、だと……まだ俺、は、一口も――」



 ――――

 ――






 やけに体がだるい、どうやら眠ってしまったようだ、まるで二日酔いのように頭がズキズキしている。体に伝わる布の感触、布団の中だ。

 俺は起き上がろうと上半身を起こした、



「え?」



 慌てて布団をめくり下半身を確認する、この森では電気がないようだ、部屋に置かれた松明の薄暗い灯りだけが頼りだったが、それでも分かる。



 履いていない!



 どうりで体全体で布の感触を感じたわけだ、


 わけだが……




 俺の太ももの隣に、張りのある透けるような白い膨らみが二つ見える。

 これは――



 目線を隣に持っていくと、うつ伏せのアルメリーが、水滴が滑り落ちるような滑らかな曲線を描いた背中を露にして、眠っている。



「!!」


「ん? ん~ん」



 寝返りをうったアルメリーは、うっすらと目を開き、半目の状態で口角をゆっくりと上げた。



「んふふ、起きたの?」


「あ、その」



 起きたと言ってもまだ窓の外は暗かった、俺が落ちたのが夕方、日が沈む頃だったのだから、眠っていたのもまだ数時間だろう。



 大きくはないが綺麗なおわん型、白い肌に薄いピンク色の――


 ってヤバッ!



 俺は慌てて彼女に布団を被せた、隣に全裸の女子が寝ている、そして俺も全裸、ということはもしや事をしでかしてしまったのか、だとすれば俺の初体験は無意識のうちに済ませてしまったということになる。



「もう、どうしたの?」



 アルメリーが被せた布団から顔だけを出して微笑んでいる、



「お、俺はいったい?」



 ヤったのか、ヤっていないのか、焦る俺にアルメリーはさぞ勝ち誇ったような笑みでじっと俺を見つめた。



「ホントに初めて? 凄かった……」




 ――――ヤっている。


 祝、童貞卒業。と、いうことか? しかも俺は自分で童貞だということもカミングアウトしているようだ。マリジューレに突っ込まれた時にも全力で拒否したというのに、なんと情けない。


 じっと見つめてなにも話さない彼女に気まずくなった俺はこの場を離れなくなった。


 耐えきれず背を向けると、目の前に服が畳んである、薄暗い松明の灯りで照らされた服は、今まで俺の来ていた服ではなく、彼女達と同じような緑色を基調としたいわゆるエルフっぽい服だった、その隣に一緒に置かれた剣が、これは婿様の服ですよと、言っていることがすぐに分かった。


 手を伸ばし、上半身がベッドから落ちそうになりながらもなんとか服の端をつまむことができた、後はズルズルと引き寄せ、魔物が捕食するように布団の中へ服を取り込んだ。



「ちょ、ちょっと、トイレ」



 この場を立ち去るにはこう言うしか思い浮かばなかった。



「はぁーい」



 布団の中で服を着る、サイズがピッタリと合っている。やはりこの服は俺の為に用意されたものだ。

 一度ヤると彼女面かのじょづらする女がいると聞いたことがある。起きた後に見る彼女はやけに馴れ馴れしくなっていた、言葉使いや表情からそれが滲み出ている。これがヤった後の女の変化とでもいうのか、俺はゆっくりと扉を閉めた。



 寒くも暑くもなく、心地よい風が頬を撫でた、部屋を出ると両サイドの壁は無く、開放的な廊下が続いていた。

 木製のログハウスのような建物だった。


 虫の鳴き声と森林のすんだ空気、手すりに両手をつき、俺は肺いっぱいにその空気を吸い込んだ。

 それは子供の頃に家族で泊まった山奥の旅館によくにていた。

 あの頃と同じように、両手を広げて大きく深呼吸した――――



 俺はあの娘とヤってしまったのか、だとすれば責任をとらなければいけないということにも、なりかねない。

 森の王になってここで暮らすのか、エリザは? マリジューレ、グラタンはどうする、それに魔王を倒さない限りこの世界は安心して暮らせないはず。


 いくら考えても全く答えが出るとは思えなかった。俺はこれからどうなってしまうのだ――――

 気持ちを落ち着かせようと、もう一度、深呼吸した――――



「なかなかいい感じなところなのに……」


「でしょ?」



 突然後ろからの声に、ビクンと飛び上がった。

 一人のエルフが俺と反対側の手すりにもたれるように腕を組んで立っていた。切れ長の目に長い緑色の髪、前髪が顔の半分を隠すように覆い被さっている、制服のように皆同じエルフ服はアレンジされてあり、ホットパンツのように短く切られた裾からは頬擦りしたくなるような綺麗な太ももが伸びている、ヘソピアスが光るお腹はくびれをハッキリと目立たせるように露出してあり、放漫な下乳が見えるほどだ。



「あ、いや、あの、いつからそこに……」


「はじめから……それよりキミ、凄かったね」


「凄いって、な、何が?」


「声よ、こ、え」



 彼女は一度ため息をしてそう言った。分かっているくせに、と言いたそうに



「キミ、この中で何ヤってたの? 外まで聞こえてきたんだから……こっちまで……」



 彼女はうつむき、下半身をモジモジと動かすと、垂れた髪を耳にかけた。

 一見クールな感じを漂わせた彼女だったが、頬が若干赤らんでいるのは、等間隔に設置された松明の灯りでも分かるほどだ。



 上目遣いで見つめる彼女と目が合うと、俺の鼓動が高鳴った――――


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