赤い戦士12



「何これ......」





 何か硬いものに当たる音が聞こえる、同時に手応えの無さも伝わってくる。




「え?」


「よっわぁ」



 目が慣れてくると、オリヴァンは両胸で俺の剣を挟んでいる。

 何と言うか、このポーズ的には豊満な胸の人にしかできないという男女の行為のあの......



「ごめんね、私、光耐性なの......んふ」


「ひ、光耐性?」


「うん、私にわぁ、光の攻撃わぁ、通用しないって、事!」



 振り上げられるムダ毛処理をした綺麗な脚が、俺の局部にめり込む、



「――!!」



 言葉にならない程の痛み、痛恨の一撃とはこの事だ、俺は腰だけを上げてその場にうつ伏せに崩れ落ちると共に、両手で自分の大事な部分を押さえていた。



「アレ? キミ、こゆの嫌いだった?」



 俺が悶えるのを楽しんでいるかのように顔を覗き込んでくる。



「じゃ、次はあの死に損ないだね」



 ゆっくりとエリザに近づくオリヴァンの足元には、ヒートチェーンが蛇のようにまとわりつく。


 エリザは恐怖のあまり、何も出来ない事は愚か、オリヴァンが近づくにつれて、両手で口を塞ぎ、首を左右に振りながら涙を流す。



「アレアレー? どうしたのかな? お姫様」



 鼻の頭が当たりそうなほど、エリザに近づくと、ヒートチェーンの先も同じ距離にエリザを見る。

 やがてチェーンはゆっくりとエリザの回りを一周して、体に巻きついていく、大きな蛇が獲物を捕らえた時のように。



「うわっ、汚ねぇ!」



 一瞬飛び退いたオリヴァンの足下には、薄黄色い液体が流れ出て、水溜りが広がるようだった。



 ラムレは動かなくなった、エリザは無言で失禁し、涙を流す。



「ゃやあめろー!!」



「うるさいのら――」



 俺にできる事はもう「止めろ」と、叫ぶことぐらいだった、それを遮るかのような、幼さの残る低い声――


 ラムレとグラタンがいる場所から突然火柱が上がる。

 ものすごい勢いだ、部屋中が溶けてしまう程の熱気を放つ。その火の中に二人はいる。



「お、おい!」



 俺が焦ったのも束の間、火柱は型を変え、大きな燃え盛る炎の鳥となった。



「許さないのら、そこの女」


「な、何、あんた――」



 炎の鳥のクチバシが怯んだオリヴァンを捕らえる、正確には実態のない炎がオリヴァンの体をすり抜けるようだった。

 その瞬間、オリヴァンは黒い墨の塊になって、地面に倒れた。



「げっぷ」



 パーンと弾けたように炎の鳥は消えて、その場所にはちょこんと座るグラタンがいた。



「うー、食べすぎたのら」



 お腹を摩るグラタンの腹はプックリと飛び出している。



「グラタン様、一人でイけましたね」



 服の戻ったラムレが、グラタンの頭を撫でる、



「そうら、やったのら、これからは一人で、自分でできるのら!」



 きょとんとする俺達と同じ表情で二人もこっちを見ていた。



「さっきの、グラタンなのか?」


「ん? そうら、我は不死、鳥、と言っておるのら」


「そうでございます、グラタン様は炎の不死鳥、火を吸収する事により、その本来の姿になる事が出来るのです」



「え、じゃあ、これまでの騒動を収めたのも......」


「そうら、エリザの炎を吸収したのも、我ら。初めから出来なかったのは、その炎量が多すぎて、子供の我には少し怖かったのら」


「え、じゃあ光の魔法って......」


「あ、そんな魔法、無いのら」


「なんだよそれ、じゃあ何で俺がやったって言ったんだよ」


「初めは冗談だったのら、そんな魔法無いと、すぐ嘘だと気づくと思ったのら、でもエリザの勢いが凄すぎて、止められなくなったのら!」



 顔が赫らむエリザ、少し大きめの失禁後を気にしながら、俺を上目遣いで見る姿にドキッとした。



「お、勇者も我と同じ変形型の人種なのから?」


「は? 何で?」



「だってそこ、変形を始めておるではないか」



 股間に指を指して笑うグラタン、



「何になるのら? 虎か? 狼か?」


「ち、違う、これは!」


「勇者は、エリザのおしっこを見て、変形するのだなぁ! 変わっておるな、わはははは!」



 咄嗟に股間を隠す、エリザの顔は下を向いていて、俺を見ていない、







「......変態」



 子供達の手を繋いで神殿に現れたのは、保育士さんのようになったマリジューレだった。



「グラタン様、あれは、変形ではありません、変態......と、言うのです」



 ラムレとマリジューレはどこか同じようなにおいがする。



「おお、そうか、勇者は変態するのか! さぁ、してみよ、その変態とやらをしてみよ! 遠慮することはない! 変態をしてみよ!」


「変態、変態、言うなー!!」



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