赤い戦士11



「久しぶり、勇者くん」



 あの女、というか男。

 あの時の格好とはまた違う衣装だった。白いテニスウェアのようなノースリーブにミニスカート。薄いピンク色のパンツが丸見えだった。



「お前!」


「あー、今パンツ見たでしょ?」


「え? 見たのですか、エージ様」


「あ、え? いや、見て無いよ」


「見て無いと言っていますよ!」



 とはいえエリザのフォローは力を持たない、なぜならあの聖職者は正面でしゃがんでいる。この場所にいる全員からは嫌でもそのパンツが目に入るからだ。



「そんなションベン臭い女ほっといて、私に乗り換えなよ」


「てかお前は男だろ、俺はそっち系じゃねぇんだよ」


「えー、でもそこの女より、魅力的でしょ?」



 座っていた高い場所から飛び降りる聖職者。

 勿論、物理の法則により、短いスカートは完全にめくれ上がり、隠しもしない聖職者のへそまでが露わになった。

 猫が着地するように、静かに足を着くとゆっくり立ち上がった。



「どう? 私のパンツ、何色だった?」



 視線は俺に一直線だ。エリザは俺と聖職者を見て頬を膨らませる。



「見たのですか?」


「い、いや......」


「嘘、嘘ですわっ」



 ジワリと汗が滲むが、これは見てないと言った方が嘘になる。



「な、何なのら、お前!」



 グラタンが突っかかるように聖職者に言いよる。姿勢を正すと、両手を胸の前で組み合わせて、上目遣いなポーズをとった。



「ハイ、魔王親衛組の聖職担当のオリヴァンです



 さながら多人数系地下アイドルの自己紹介のようだ。



「グラタン様、敵にございます!」



 身構えたラムレを中心に魔法陣が床一面に広がる。



「今すぐ帰りなさい、そうすれば命だけは助けます」


「へー、そっちがその気なら、こっちもやっちゃうよ」



 聖職者が手をかざすと、杖が現れる。

 すぐさまラムレの作った魔方陣がかき消される。



「貴――」



 一瞬だった、ラムレの口に聖職者の放つヒートチェーンが突っ込まれる。



「がほぼっ」



 これでもかと見開く目、涙とが流れ、額に汗が浮かぶ。眉間のシワや口から溢れるヨダレで、そのクールビューティーな顔は崩れてしまう。



「ん、ヒート......スタート」



 聖職者がボソッと言うと、ラムレの体が真っ赤に染まる。



「あ、熱い、熱いぃい!」



 倒れて転げ回りながら胸をはだけるラムレ、豊満な胸は露わになりたぷんたぷんと揺れる。



「ラムレェー!」



 グラタンが駆け寄るが、ラムレから放たれる熱気のせいで近づけない、エリザは俺の横で口を押さえて震えていた。

 この状況、どうすればいいんだ、混乱しそうな頭を抱えて天井を見上げる。




 ――ホーリーオール、俺はグラタンが言っていた光の魔法の事を思い出した。



「おいグラタン、俺はどうやって魔法を放ったんだ! 自分では覚えてないんだよ、何か呪文的なものがあるのか?」


「そんなもの無いら!」


「じゃあどうやって俺はさっき......」


「そんな事より、ラムレを助ける方が先ら!」



 グラタンはワタワタとラムレの回りを回っている、俺が助けなければ、そう思う。可愛い子があんなに苦しんでいるのだ。



「ちっくしょー!」



 無我夢中、ヤケクソだった。

 とりあえず目の前のアイツを倒せば何とかならないかと、俺は背中に背負う剣を抜き、一直線にオリヴァンへと向かって走った。


 突如、振り上げた剣から光が放たれる――


 ――キタ、魔法剣だ! 勝てる!



「何それ、嫌、やめて!」


「くらぁぁあええぇぇええ!!」


「キャアァァアーー!」



 正面からオリヴァンの額めがけて眩ゆい光の剣を振り下ろす。

 部屋全体が光に覆われ、目の前が真っ白になった。


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