赤い戦士10

 


 肌は荒れて、ボロボロだった、アイドルのような顔はその原型を留めていない、



「エリザ、待ってろっていっただろ?」


「一人で、いるの......怖くて」



 俺は涙目になったエリザに駆け寄り、肩を抱く。



「おお、エリザかなのら?」


「ウォーリア......様?」



 俺の陰からグラタンが顔を覗かせる。



「す、すまぬエリザ、我は一度寿命になってしまったなのら、だから今はこんな姿になってしまい、能力も無くなってしまったのら」


「わかりました......どうやら、ここまでのようです」


「エリザ、何言ってるんだ」


「ゴボォ」



 仰向けになったエリザの口から火柱が上がる、目からは涙が流れ出る。



「お、おい!」


「あ、あづい、あづぃぃいいー」



 エリザは自分の胸に手を当て服を破り散らす、大きな胸が左右に揺れる、

 目の前で苦しむエリザに俺は何も出来ないのかと、悔しさが込み上げる。

 隣ではバタバタと飛び跳ね、手を叩いてはしゃぐグラタンがいた。



「お、勇者よ、エリザの胸を見られるチャンスなのら」


「は? 何言ってんだよ!」


「そうか、こんなボロボロの肌では、興奮せんらか?」


「お前、いい加減にしろよ」


「何がなのら、人はいずれ死ぬもの、死ねばまた、生まれ変われるのら」


「うるせぇ、エリザはもうエリザでは産まれないんだよ、不死鳥のお前には分かんねえよ!」



 初めて出会った時からのことを思い出す。

 無くしたくない、エリザをこんな俺のせいで殺してしまうわけにはいかない、なんとかして助けたい――


 熱せられた鉄のように熱くなった体を抱きしめる、俺の服はエリザの熱で火が着いた。


 俺はどうなってもいい、エリザを、彼女を助けたい――



「なら、助ければよいのら」



 こんな時にまたガキが意味のわからないことを言う。もういい――



「エリザ、俺も一緒に」


「え、エージ、様」



 体が炎に包まれる、目が霞む――




 ――



 硬く閉じた目を開いたのは少ししてからだった。


 次第に眩んだ目が慣れてくる。

 体を起こしたエリザが目を見開いている。彼女も何が起こったのか分かっていないようだ。



「な、治ってる」


「本当だ、治ってる」



 エリザの皮膚はおろか服も元どおりになり、俺の体も焼け爛れていない。



「ま、マジか? 何が起こった? 死んだのか?」


「ホーリーオール......全ての異常状態を浄化する魔法。初めからそうすればよかったのら」


「ホ、ホーリーオール?」


「エージ様っ!」



 突然視界がブレたかと思うと柔らかな弾力に押し付けられる。何が起きたのか全く分からない、分かるのは今、俺はエリザの豊満な胸の間に顔を埋めているということだけだ。



「ホーリーオールと言えば光の魔法、エージ様、ありがとうございます!」



 ま、まあ、何にせよエリザが助かったことは事実で、良かった。そしてこのご褒美的な仕打ちも嬉しい。



「良かったのら、勇者エージは、大きいオッパイが好きなのら」


「おいっ、何言って!」



 無邪気に笑うグラタンには、心が読まれることを忘れていた。

 慌てて体を上げる。



「だってそうなのら、本当のことなのら」


「んなこと無い!」


「よいのです、エージ様、私の胸で宜しければお気の済むまで、揉みしだいて下さい」


「ハハハ、よかったのら、勇者エージ」



 グラタンの笑い声を筆頭に俺以外のみんなが笑った。大きな石造りの部屋は声を反射して和やかな空気に包まれる。このままマリジューレの元へ早く帰ってやろうと思った。





「あーあ、つまんない」



 見上げるほど高い場所にある窓、そこにしゃがんでいたのは、あの女? だった......




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