赤い戦士9



「我は不死鳥、レッドウォーリアなのら!」



 両手を腰に当て仁王立ちの女児――

 ほくそ笑む口から見える片方だけの八重歯が光る。



「ハハハ、かわいいレッドウォーリアだねー」



 小さな子をあやすように腰を下ろし、目線を合わせて頭を撫でる。

 女の子は目を閉じ頭を撫でられる。この歳くらいの子供はかわいい、だが今は子供の遊びに付き合っている暇は無い。



「あの、本物のレッドウォーリア様はどこに?」



 俺は目線を上げて隣にいる女性に合わせる。



「あ、いや、ですからこの方が......」


「辞めよ、無礼者!」



 頭を撫でている俺の手を叩き退ける女の子、気の立ったような目つきで俺を見る。



「我がレッドウォーリアと言っておるのら、名前をグランディアターレットと申すのら。略してグラタンと、呼ぶのら」


「いやいやいや、そんな筈ないでしょ?」



 不死鳥と呼ばれている以上、てっきり初めに見たあのホログラムのような鳥を想像していた。それがこんな年端もいかない女児だとは思いもよらない。



「そんな筈あるのら! 信じるのら!」


「いや、信じろってもさ」


「何をー!」



 頬を膨らませたグラタンは、両腕を振り回しながら俺に突進して来た。

 避ける気にもならなかった俺はその攻撃をまともに受けた。


 予想通り、その攻撃は子供が叩く程度。痛くもかゆくも無い。



「このぉ、どうだ! これで我のことを信じたかなのら?」



 こんなものを見せられると、余計に信じられなくなる――


 ハアハアと肩で息をするグラタンに俺はよしよしと頭を撫でる。



「もう! バカにするでないのら! 我は小さい子じゃないのら!」


「はいはい、じゃあ本物って証拠があるのかなぁ?」


「バカにするならぁ!」



 またもや俺の手を叩き、下唇を噛むグラタン。

 優しく微笑む俺と目を合わせ続ける。その目はジワリジワリと潤んでくると、瞼に涙が溜まり始めた。

 するとグラタンは突然振り返って女性の方へ走り出した。



「ラムレぇー」



 小さな子が甘えるような声でラムレと呼ばれた清楚な女性の巨乳へと飛び込んだ。同時に肩を震わせるグラタン。



「あの、少しやりすぎではありませんか?」



 グラタンを撫でながらラムレが鋭い目つきで俺を睨む。



「あの」


「まだ子供なんですよ」


「あ、いやでも、本人は子供じゃないって......」


「あなたそれでも大人ですか、そんなの、小さな子供なら言ったりするものです」


「は、はぁ」



 とはいえこの状況、こんな子供にエリザの命を助けられるとは思えない。



「だから、子供じゃないのら! それにさっきから言っておるのら、願いは聞けれないのら」



 さっきから思っていたが、この子、俺の考えたことがわかるのか――?



「な、なぜ分かったんだ、俺の言おうとした事」


「我は、心を読むことができるのら、お前の考えくらい読めるのら」


「じゃ、じゃあ話が早い、が......どうすんだよ、やっぱり直せないのかよ!」


「まだ力が無いのら、後十年以上はかかるのら!」



 そんな――



「そ、んな......」



 掠れた声と、大きな物音がする。

 振り返ると、エリザが崩れ落ちるように膝をついた。



「エリザ!」

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