赤い戦士6

 


 完全回復した――



 やはりマリジューレはエロい歳上女なのか? 口では違うと言っておきながら、やっていることは真逆だ。だとすれば今までのことも全て俺のことが好き、の裏返しということなのか?




 ミシッ......



「がはっ」



 淡い期待と共に受けた激痛は頬を抉り地面に叩きつけられる。



「はい。終わりました、ヒールオールです」



 ツーっと、鼻の穴から血が流れる。



「え、エージ様? おいマリジューレ、本当に全回復なのか?」


「ええ、全回復です。さあ姫様、先を急ぎましょう」



 何もなかったように立ち上がり、少し先に見える山の上にある神殿を見上げる。



「待ってくれよ、お、俺はいいけど、この子......」


「わたし、あのふもとにある村に帰るところだったのー」



 女の子の指を指す先には神殿の山の下に小さな村があった。



「そうか、では、一人で帰ればいい」



 マリジューレの一言で女の子の顔が途端に曇る。



「おい、何でそんなこと言うんだよ」


「私は子供が嫌いだ」


「だからってそういう態度はどうなんだよ」



 どうも腑に落ちていないような顔で俺を見るマリジューレ。



「ひとまず、村に行きましょう、嫌なら付いてこなくて良いです、マリジューレ」


「姫様......わかりました、行きます」



 微妙に重い空気の中歩き出した俺達の後ろに横たわる大鶏は死んではいなかった、瀕死の状態のまま、放置されている。



「なあ、マリジューレ」


「何だ?」


「アイツにヒールしてやれないか?」


「「は?」」



 俺の言葉に全員の目線を集める、



「貴様、気でも狂ったか!」


「い、いや......なんだか可哀想だなって」


「貴様がやったのだろうが!」


「いいだろ? 歩けるようにだけでもしてやってくれないか?」


「マリジューレ、エージ様の言う通りにしなさい」


「っ、姫様!」


「良いのです、伝説の勇者様は万人に優しく、そして最強なのですから」



 更に不本意なため息を吐いて、気怠そうに腕を伸ばす。



「リトルヒール」



 起き上がれなかった大鶏が立ち上がる。



「クエー」



 そう鳴くと、落ちたパンを咥えて森へ向かい走った。



「ありがとう、マリジューレ」


「ふんっ」


 


 ***




 小さな村に着いた。

 女の子の名前はリスティナと言った。

 村の入り口で、大きく両手を広げ、大の字になる。



「フシの村へようこそー」



 人が行き交い、多くの店が連なり賑わっている。しかし俺はその光景に違和感を抱く、



「あ、リスティナちゃんだー!」



 一人の男の子が駆け寄って来たと思うと、手ぶらのリスティナを見てその勢いが無くなる。



「あれ? パンは?」


「......ごめんなさい」


「えー、パン無いのー」


「帰る途中、魔物に襲われて。あ、でも大丈夫、お姉さん達が買ってくれるって」


「そっかぁ、ありがとう、お姉さん」



 無邪気に笑う子供達だが、さっきから感じる違和感、そう、この村には......



「リスティナちゃん、大人の人はいるかな?」


「いないよ」



 大人がいない――――





「なぜ大人がいないんだ? エリザは一度来たことがあるんだろ?」


「私にもわかりません、前回は普通の村だったはずですが」



 手を取り合って喜ぶ子供達、ではこの子達はどうやって生活しているというのだ。



「パン買ってくれるんでしょ? 早く行こ」



 リスティナは俺とエリザの手を引き村の外へ出ようとした、



「えっ、どこへ行くんだ?」


「隣街だよ、パンは隣街じゃないと売ってないんだよ」


「ちょ、それは危険だ、マリジューレ。魔法でパンを出してくれ」


 ......



「バカか、貴様は、私の魔法はそんな便利なものではない」



 はぁとため息が出る。



「――貴様、今、使えんなとか思っただろ?」



 マリジューレが俺の後ろに回り込む



「い、いや......とんでもない」


「本当か?」



 スーッとマリジューレの腕が肩の後ろから胸の前へと伸びる。同時に二つの膨らみが背中に押し付けられる。



「や、止めろよ、子供の前だぞ!」


「だから、どうした?」



 ゆっくりと肘ともう片方の腕が俺の肩の上で絡み合う。



「ん? 言ってみろ」


「ただ少しだけ、がっかりしただけだよ」


「やはりしているのではないか!」



 フェイスロック――



 締め上げる程に胸が押し付けられる。嬉しいのか、いやしかし息苦しい。俺は腕を叩きタップする。

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