レッドウォーリア

赤い戦士



「なんだか昨日のアレを咥えてから、体が熱いのだ」



 ボコボコに腫れ上がった俺の顔は、とても宿で休息を得たようには見えなかった。

 あの後からエリザは俺にべっとりとくっついて離れない。

 その状況を見たマリジューレに何度殴られたのかは覚えていない。



 俺達は何か情報を教えてもらえないかと、レアアイテムの爺さんがいる小屋に向かった。





 マリジューレの目を盗み俺のズボンを下げようとするエリザ。



「ちょ、エリザ」


「あ、あの口いっぱいの感触が忘れられんのだ、頼む、あの感じに似たアレは男しか持っておらん」




 いや、しかし俺のアレは彼女の口をいっぱいには出来ないと思うのだが――――





「姫様!」



 マリジューレに前髪を捕まれ額を押される、首の骨が折れそうな勢いだ。



「貴様、少しは抵抗しろ!」



 朝からこの繰り返しだった。しかしこの状況、俺はこの先体が持つのだろうか、少しでもエリザが俺の体に触れようものならば、マリジューレはエリザと俺の間に割って入り、首の骨が折れるほど額を押し、俺を遠のかす。





 なんとかたどり着いた小さな小屋のドアを開ける。マリジューレは棚を物色し、一つの手錠を手に取りエリザの手に取りつけた。



「何をするマリジューレ」


「姫様、しばしのご辛抱を」



 カウンターの奥から爺さんが出てくる。



「これはこれは、勇者様御一行、いらっしゃいませ」


「この手錠をもらうぞ」



マリジューレはエリザの手首を持ち上げる。



「ああ、愛の手錠でございますね、ありがとうございます」


「愛の手錠? なんだその如何にもと言うような名前は」


「ええ、その手錠には鍵がありません、故に愛の手錠なのでございます」


「意味が分からんぞ、じゃあどうすれば良い?」


「愛さえあれば、手錠をしていようが、否、手錠をしていた方が、燃えるということですよ、ヒヒヒ」


「だから意味が分からんぞ爺さん、それでは単なるエロアイテムではないか」


「いやいや、冗談ですよ。真実の愛が鍵になっております、その人を本当に愛する人は鍵を持つことができますでしょう」


「そうか......ならば大丈夫だな」



マリジューレはエリザを見つめた。



「燃えるなぁ、燃えるぞ、エージ様、私を打ってください、もっと虐めてください」



 大股を開き、潤んだ瞳で俺を見る、



「熱い、燃えるように熱いのだ、触って、エージ様」


「え、エリザ、何言ってんだよ」


「姫様に何をさせているのだ! 下民」


「ま、待ってくれ、俺じゃ――」



 俺の声を聴き終わる前のマリジューレの拳で顔の皮膚がよじれるように巻く、衝撃で体が浮く、そのまま壁に一直線だった。



「おやおや、これはヒートチェーンの仕業ですなあ」


「わ、分かるんですか」


「はい、勇者様、体が熱くなり次第に内臓を焼き尽くす魔法、それがかかった人は本能で分かる、自分が死ぬということを、人は死が近くなればなるほど、種を保存しようと思う生き物です、極端に性欲が増す魔法、とでもいいましょうか」


「な、なんだその魔法、エロ魔法じゃねーかよ」


「治す方法はあるのか、爺さん」


「あるにはあるのですが......」


「勿体ぶらずに早く言え」


「はいはい、この街から南へ三日三晩歩くと、神殿があります、そこに住むレッドウォーリアという不死鳥ならばその治し方を知っているかもしれません」


「何? あのレッドウォーリア様か!?」


「姫様、知っておられるのですか」


「ああ、前回も世話になった――ガフッ」



 口から青白い炎が出た、咳をするように何度も炎が見える。



「あれ、なんだこれは、熱い、体が熱いぞ」


「姫様!」


「痛い、熱い、エージ様」



 頬が赤く、目は虚ろだった、倒れそうになりながら走って来る。座っている俺の立てた膝の間にむさぼるように顔を突っ込む。



「失礼!」



 爺さんはカウンターを飛び越えてエリザの肩を掴み、俺から引き離し仰向けに押し倒す。



「いや、爺さんじゃ嫌なのだぁ」



 首を振り、拒否するエリザの口に円柱形をした筒を押し込む、「んぐぐ」と、目を開き涙が一雫流れる、力を入れて更に口の奥へと入れる爺さん。



「んぐっ、ぐぐ」



 しばらくすると、息苦しくなったのか、手足をばたつかせるエリザ。



「爺さん、事の次第では生かしておかんぞ」



 マリジューレが腕を組み目尻を釣り上げる。拳に力が入った。



「はぁ......」



 エリザの声が聞こえる。その声からは、体の力が抜けるような安堵感が感じられた。



「失礼しました」



 爺さんは押し倒したエリザの上から降りると、唾の糸を引く円柱をゴミ箱に捨てる。



「凍結薬、本来ならば一撃でその体の表面を凍らせることのできる注射になっておりますが、それを体内に打つことにより、直に内蔵へ届けその効果を発揮させます」


「はぁ、助かった。ありがとうございます、お爺様、すまない、マリジューレ、エージ様」



 座り込み、冷静を取り戻したようだった。



「効果は三日です、その三日以内になんとかして下さいねぇ、でなければ、溜まった三日分の......いや、逆にそちらの方が勇者様にはよろしいのかもしれませんね、ひひひ」


「くだらんことを言うな、爺さん」


「ひっ、では、青いメイド長様には、レッドウォーリアの羽を持って帰って頂ければ、ご希望のレアアイテムと交換させていただきますので、そちらの方もよろしければ――」



「だから爺さん、くだらんと、言って、いるのだ」



 マリジューレは目尻を下げながらカウンターに全ての宝石を残して小屋を出た。



「マリジューレ、それ、払い過ぎじゃね?」


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